平安から鎌倉時代に輸入、珍しい高麗青磁や中国産緑釉陶器 奈良市の奈良町遺跡
奈良市内侍原町・高天市町の奈良町遺跡で、平安-鎌倉時代に日本に輸入された高麗青磁や中国産緑釉(りょくゆう)陶器が見つかった。どちらも全国的に珍しい資料で、市教育委員会は「特筆できる貴重な遺物」としている。3月1~31日に市埋蔵文化財調査センターで開かれる春季発掘調査速報展で公開される。
市教委が2023年4~7月、近鉄奈良駅の北方約360平方メートルを調査。11世紀後半から14世紀半ばの穴や溝から大量の土器が出土した。
高麗青磁は12世紀末ごろの遺構から出土。「梅瓶(めいぴん)」と呼ばれる主に酒や油を入れた容器の一部で、白土を埋め込む象嵌(ぞうがん)技法によってツルなどの文様が描かれていた。朝鮮半島の高麗時代(918~1392年)に焼かれた青磁は12世紀に最盛期を迎え、中国や日本で高級品として評価された。今回の遺物は工芸的にも優れ、まれな出土事例になる。
中国産緑釉陶器は13世紀中ごろの中国福建省・磁竈(じそう)窯で焼かれた皿の破片で、型押しした文様が施されている。類似した品は京都市や神奈川県鎌倉市、フィリピンで確認されているという。
ほかに中国産青磁の香炉とみられる透かし彫りされた陶器の破片や中国産白磁も出土。「興福寺」銘の瓦も見つかった。
市埋文調査センターの中島和彦所長補佐は「高麗青磁梅瓶や中国産緑釉陶器皿は非常にレアな資料。当時の奈良は京都に次ぐ第二の都市で、当地の居住者の財力もうかがえる」と語る。
調査区からは古墳時代から近代までの遺物がコンテナ容器で418箱分出土した。遺構は、5世紀中ごろの古墳の周溝の一部▽奈良時代の平城京造営後に古墳を削平して造られた道路の側溝▽平安時代の建物や区画溝▽江戸時代の土器や瓦を大量に廃棄した穴―も検出した。
菊井佳弥学芸員は「遺物量も多く、古代から近代までの同地の利用の変遷が分かる成果が得られた」と話す。