地域の石碑、探して調べて 奈良文化財研究所がアプリ「ひかり拓本」正式リリース スマホで手軽に碑文判読
奈良文化財研究所(奈文研)は、石碑の文字に光を当ててその影から碑文を判読するスマートフォン用アプリ「ひかり拓本」を26日、正式リリースした。各地に数多くありながら風化が進み専門家でも判読が難しい石碑の文字を、誰でも手軽に読み解くことができるのが特徴だ。
ひかり拓本は石碑に刻まれた文字にさまざまな角度から光を当て、その影を撮影した複数の画像を合成する技術。奈文研埋蔵文化財センターの上椙英之研究員が2016年に開発した。
スマートフォンを固定する三脚と懐中電灯を用意し、複数枚を撮影するとアプリが約5分ほどでひかり拓本を自動作成する。石碑を汚す恐れのある拓本や、一方向から光を当てて画像を撮影する従来の手法より、安全で簡単に碑文を判読できる。
事前に設定した時間の間隔でシャッターを切るインターバル撮影機能も備え、一人でも撮影が可能。スマホのGPS機能を利用してひかり拓本を作成した石碑をマップ上に表示することもできる。
奈文研と文化財活用保存センターは昨年10〜12月、スマホ用アプリの開発・公開費を募るクラウドファンディングを実施。目標金額380万円に対し、奈良を中心に東京や東北、九州など全国359人から653万円の支援が寄せられた。
上椙研究員は「想像より多くの人に関心を寄せていただいてうれしい。まずは石碑を探すことから始め、石碑の文字から地域の歴史について考えるきっかけになれば」と話す。
小中・高校などの教育現場でひかり拓本を活用してもらうため、機材の貸し出しと研究員による出張指導もする。
スマートフォンに「ひかり拓本」アプリをダウンロードして利用する。価格は800円(税込み)。売上はアプリの保守・改良と教育現場への機材貸し出しに充てる。
問い合わせは、奈良文化財研究所埋蔵文化財センター、メール[email protected]