奈良県など5県主催の「古代歴史文化賞」大賞に設楽さん 優秀作品賞に奈良市出身の中塚さん
国民の歴史文化への関心を高めた書籍を表彰する「第8回古代歴史文化賞」(奈良、三重、和歌山、島根、宮崎の5県主催)の発表会見と贈呈式が2日、東京都千代田区の帝国ホテルで開かれた。大賞は設楽博己東京大学名誉教授の「顔の考古学―異形の精神史」(吉川弘文館)が受賞。このほか、奈良市出身の中塚武名古屋大学大学院教授の「気候適応の日本史―人新世をのりこえる視点」(同)をはじめ優秀作品賞4点、特別賞1点が選ばれた。
選考対象53作品から選定された。また、受賞者5人には主催各県から特産品が贈呈された。
「顔の考古学―異形の精神史」は縄文時代の土偶をはじめ仮面や埴輪(はにわ)、土器など律令時代までの造形物に見られる「鬼」や「イレズミ」という特異な顔の表現について、その意味と果たした役割、変遷を論考した。
また、「気候適応の日本史―人新世をのりこえる視点」は「古気候学」の研究成果から気候変動を数百年の「長周期」、数十年の「中周期」、1年から数年の「短周期」の三つに分けて歴史事象と気候適応の関係を考察した。
設楽さんは「縄文時代から律令期までのイレズミの不思議な変遷をたどることで、その社会的意義を書くことができた」、中塚さんは「古代人が気候変動へ適応した歴史を知ることで今後の社会のあり方を考える一助になればと思い執筆した」とそれぞれの思いを語った。
同賞は2019年の第7回以来3年ぶりの開催。今回で終了する。