ススキやヨシを幾層にも重ねたかやぶき屋…
ススキやヨシを幾層にも重ねたかやぶき屋根は遠目にも美しい。近づいて見上げると、ふき替えにどれほどの時間と労力が必要だろうと考えてしまう。
かやぶき屋根の家屋は夏涼しく冬暖かい、耐用年数が長いなど魅力的だが、弱点は言うまでもなく火災に弱いこと。檜皮(ひわだ)ぶきも同様だ。
昨年、安堵町の中家住宅で主屋のかやぶき屋根が近隣からの飛び火で大きな被害を受けた。所有者の中寧さん夫婦は修復に向けたクラウドファンディングに協力を呼びかけている。
奈良市消防局が行った植物性屋根の燃焼実験では、かやぶき屋根は5分ほどくすぶり続けた後、一気に燃え広がった。檜皮ぶきは無炎燃焼で下へ下へと焼け込んだ。忍び寄るようにじわじわと広がる火種が恐ろしい。
中さん夫婦は主屋のかやぶき屋根を8年前にふき替えたばかり。炎に包まれる光景に、「言葉にならないほどの無力感と喪失感を抱いた」という。
1月26日は法隆寺金堂の火災を忘れまいと設けられた71回目の文化財防火デーだった。火の気が恋しい冬の一日、改めてその意義を考えたい。(増)