展示作品を撮影できる展覧会が増えている…
展示作品を撮影できる展覧会が増えている。当初は常設展中心だったが、今は企画展にも広がる。
背景にはSNS(交流サイト)活用の広範囲な浸透がある。美術館側は撮影可とすることで写真、情報の拡散による宣伝効果が期待できる。
県立美術館も同様の方向で、館同士の作品の貸し借りの際の撮影可否の調査も普通になっているとか。著作権者らの意向で全て不可の場合は、展覧会を象徴する代替の撮影スポットを設けるなどするらしい。
撮影可の会場で気になるのは、カメラで作品をもれなく写す人の姿だ。真意は知らぬが、レンズを通さずに作品と向き合うことをほとんどしない。
かつて作品脇の説明文を読むことばかり熱心で、作品自体をちゃんと見ていないとの指摘がされたことがある。撮影に気を取られ過ぎると、似た落とし穴が顔を出す。
絶景や新旧行事でも、本物を前に同じような行動をしがちではある。以前九州の静かな岬で、海風を浴びながら風景を眺め続ける旅人に出会った。短い会話の後、急ぎ足の確認の旅になっているわが身に気付き、少し恥ずかしかった。(智)