国原譜

新薬師寺の香薬師像(銅造薬師如来立像)…

 新薬師寺の香薬師像(銅造薬師如来立像)は光明皇后の念持仏だったという。優しげな面立ちの美仏で、白鳳彫刻の最高傑作とされる。

 その美しさと小ぶりな大きさ(約73センチ)のためか、明治以降3度盗難。2度は戻ったが、戦時中の昭和18年に盗まれた後は行方知れずのままだ。

 しかし、3年前、右手だけ盗難を免れていたことが判明。そのドラマチックな経緯は、右手を発見したノンフィクション作家貴田正子さんの著作が詳しい。

 香薬師像の右手は今、新薬師寺本堂で拝観できる。普段は奈良国立博物館に寄託されているが、聖武天皇や光明皇后ゆかりの品を出陳する正倉院展に合わせ、12日まで公開されている。

 大きさはわずか8・6センチ。天井が高い本堂で見ると、奈良国立博物館で展示されたときよりも小さく感じる。それでも、金銅仏と思えないほどの柔らかさを感じる造形美と存在感は圧倒的で、なんとしてでも仏像の本体を拝んでみたいと思った。

 中田定観住職も「今回の公開が像本体の発見の一助になれば」。1日も早いお薬師さまの帰還を夢見ている。(法)

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