国原譜

「これからの前期古墳研究のジャンプ台を…

 「これからの前期古墳研究のジャンプ台を構築できた」。県立橿原考古学研究所の菅谷文則所長の言葉にその意義が集約されている。黒塚古墳(天理市)の調査報告書が刊行された。

 調査は平成9年から11年にかけて同研究所を主体に行われ、石室から34面もの鏡が出土した。盗掘は受けていたが、石室はそれ以前に崩壊し、副葬品の多くが奇跡的に残っていた。

 中でも注目されたのは、出土した鏡が1面を除いて全て三角縁神獣鏡だったことだろう。邪馬台国が諸国に分け与えたとする説があり、その中心点と考えられてきた地域での大量出土だった。

 各地で出土していた三角縁神獣鏡との比較や成分の分析など、これまでも研究は進められてきたが、調査成果は報告書の刊行で初めて万民のものとなる。

 黒塚古墳で出土したのは鏡だけではない。刀剣類のほか、いまだ用途の分からない鉄製品や木製品もある。

 調査から20年がたち、調査委員長だった樋口隆康氏は鬼籍に入られた。記憶は遠くなったが、大発見の興奮は今も人々の胸にある。研究の第2ステージは始まったばかりだ。(増)

 

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