国原譜
キノコ類ではないが、深山の岩に生えるイ…
キノコ類ではないが、深山の岩に生えるイワタケは、古くから食材として珍重された。吉野にも群生地があり、イワタケ採りで生計を立てる人もいたという。立木に結んだ縄にすがって断崖を下りる危険な仕事だった。
銭谷武平さんの「大峯今昔」(東方出版)に、イワタケ採りにまつわる吉野の奇談が紹介されている。
江戸時代末のこと、縄で40メートルほども下りた岩棚でイワタケを採取していた男が、うっかり命綱を放してしまう。縄は手の届かない所に垂れ下がり、つかむことができない。
進退窮まった男が蔵王権現を念じて飛んだところ、縄に届いて無事帰ることができた。ところが、その後は正気を失ったように怒鳴り散らし「人が山に入ると殺される」などと叫ぶようになったという。
キノコ採りでの遭難が相次いでいる。長野県では昨年の約4倍に当たる13人が死亡、県内でも五條市の山中で今月2人が亡くなった。
キノコに夢中になるあまり、危険な斜面に入り込むこともあるようだ。知らず知らず「命綱」を手放していないか、わが身を顧みながら山の恵みを楽しみたい。(増)
銭谷武平さんの「大峯今昔」(東方出版)に、イワタケ採りにまつわる吉野の奇談が紹介されている。
江戸時代末のこと、縄で40メートルほども下りた岩棚でイワタケを採取していた男が、うっかり命綱を放してしまう。縄は手の届かない所に垂れ下がり、つかむことができない。
進退窮まった男が蔵王権現を念じて飛んだところ、縄に届いて無事帰ることができた。ところが、その後は正気を失ったように怒鳴り散らし「人が山に入ると殺される」などと叫ぶようになったという。
キノコ採りでの遭難が相次いでいる。長野県では昨年の約4倍に当たる13人が死亡、県内でも五條市の山中で今月2人が亡くなった。
キノコに夢中になるあまり、危険な斜面に入り込むこともあるようだ。知らず知らず「命綱」を手放していないか、わが身を顧みながら山の恵みを楽しみたい。(増)