孫、子に付き添われ3世代で念願の観音寺参り - 音羽山観音寺後藤住職の花だより
関連ワード:
奈良県桜井市にある尼寺「音羽山観音寺」を訪ね、後藤密榮住職の日々の暮らしぶりを季節の花だよりや住職手づくりの料理などとともに紹介していきます。観音寺には縁を求めてさまざまな人が入山します。今回訪ねてきた人たちはどんな方々でしょう。
無量庵で住職と話をしていると、鐘をつく音が聞こえました。
「誰か来たわね」
ちょうど話もひと段落。住職と一緒に本堂の方に向かいました。鐘をついていたのは小学生ぐらいの男の子2人。80歳を超えたという男性と、息子さん、孫2人の3世代4人が夏の観音寺に上ってきたようです。
80代の男性は、20年ほど前はよく観音寺に参りに来ていたとのこと。体調のこともあり、10年ぶりの音羽山だそうです。
「頂上からはハルカスも見えたなあ」と懐かしそうに話します。住職によるとハルカスからも音羽山が見えるそうです。
男性は観音寺に来ることが念願だったようで「もう思い残すことはないわ。孫が『じいちゃん一緒に行こう』と言ってくれた」とうれしそうに住職と語り合っていました。
「一人で来るのは大変やけど、孫がいると思っただけで登り切った。自信が出てきたわ」と男性。
「欲が出てきたわ。親の墓参りにも行きたいなあ」
人間とはそういうものかもしれません。身体を動かすと気分も変わってきます。
「また来ます」
そういって、住職に見送られながら、4人一緒に山を下りて行きました。
「墓に花を生けに行くわ」と住職。墓は門から上がる途中にあります。本堂まで来たついでのようですが、花はバケツに用意されていました。普段はコウヤマキが多いそうですが、この日の花はシキビです。仏様に供える花で、真言宗では奉修する時に本尊に供える花とのことです。花は3月ごろに咲くそうで、今は葉ばかり。
「これが実よ」と見せてくれたのは葉の間になっているまだ緑色の実。
「茶色くなって、弾けるの。実は毒らしいのよ」
星形のかわいい形をしていますが、猛毒のようです。
まずは、墓の周りの掃除を。草は抜いても抜いても生えてきます。
「ササが気になるのよ」
やはりササが根を広げているようです。
一通り墓の周りをきれいにして、シキビを花入れに入れていきます。
その後、「どこかで役に立たないとね」と、残ったバケツの水を、暑さに悲鳴を上げる本堂前の地面にまきます。
「花がこっちにくれーって言ってるわね」
境内の花たちが水をもらえるのは、夕方を待ってからのようです。
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。桜井市南音羽。
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。
火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門。