音羽山観音寺 後藤住職の花だより - 親から子へ編 2022年夏
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後藤住職は7人兄弟の末っ子で育ちました。実家は表具屋だったそうです。住職は好きで古い建具を集めていたこともあります。表具と建具の違いはありますが、どちらも日本家屋にかかわるもの。どこか似た感じがしました。親子はどこか似ているのでしょうか
親からもらったもの 形見は品物ではない
住職とお母さんが仲良しだった話は、何度も聞いています。それで形見は何ですかと聞いてみました。
「形見はこれ、この手よ」
しっかりした手を見せてくれました。
住職の手
「小指の爪だけシュっと長いでしょ。あとの爪は平べったいのよ。母はこの小指のように全部の爪がシュっとしてたの。平べったいあとの爪は父に似たの」
住職の形見は品物ではありませんでした。
「平べったいところの爪は、ある程度白いところが伸びないと爪が切れないのよ。指を切ってしまうから」
そう言いながら手を見つめる住職は、見るたびに両親のことを思い出すのでしょうか。品物よりも大切なことを教えてもらいました。
庭に果物がいっぱい 実家の記憶をたどり
今は道路拡張のため、愛知県にあった実家はありませんが、住職の記憶ではたくさんの果物が庭にあったそうです。
「田んぼの時期にナワシログミ、秋にサイガキ(柿の種類は不明)があって木に登って食べたわ」
このサイガキと呼んでいた木の本当の名前は分からないそうです。実は黄色く、黒いゴマが入っています。渋い実と甘い実が1本の木になる品種です。
「甘そうなのはなんとなく分かって食べてたの。渋いのは当たってないわね」
見分けるのが得意だったとか。また庭のイチジク、ナツメ、ポポー、山ではウグイスカグラ、アケビを食べたそうです。
「花では山からヤマシャクヤクを庭に移植したけれど、あまり育たなかったわね。自然のものはなかなか難しいと思うわ」
さらに家の井戸が前面道路の向こう側にあって、家は吉野建で2階が道路からの出入口でした。道路下の水路を使い、井戸からくみ上げた水を流して1階の台所まで運んでいたそうです。
夜行性のネコ、クルミが起き出して、住職のひざの上をいつの間にか占領しています。もう夕方になっていました。
住職とクルミ
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。桜井市南音羽。
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。
火曜日閉門。
17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門。