自公の組織力と銃撃事件が影響 参院選奈良県選挙区を振り返る
来春統一地方選へ野党に課題
参院選は10日に投開票され、全国的に自民党が大勝を収める中、奈良県選挙区(改選数1)も同党現職が6候補による混戦を制し、大差で再選された。投票日2日前には安倍晋三元首相が銃撃を受け死亡する事件が発生、現場となった県内に大きな衝撃を与えた。来春の統一地方選もにらみ、県選挙区の結果を本紙担当記者が分析した。
A 自民現職の佐藤啓さん(43)の陣営は当初、強気の読みを見せていたが、選挙戦中盤に報道各社の世論調査などで日本維新の会の中川崇さん(36)の猛追が伝えられ、危機感を強め、こまめな企業回りなどで票を積み重ねていった。
B 中川さんは中盤以降、街頭演説で「最初は大きな差があったが、あと一歩で勝てるんです」と支持を訴えていた。その中で安倍元首相の銃撃事件が起きた。
A 事件により各候補は選挙運動を中止したり、日程を変更したりするなどの影響を受けた。結果的に佐藤さんが快勝。当選会見で佐藤さんは「安倍元首相の後押しがあったのは間違いない」と語っていた。
C 佐藤さんの勝因は自民への批判票の分散や維新の浸透不足など、他候補が自公の組織力の壁を破れなかった面もある。また中川陣営では「まだまだ党や候補者が知られていない」といった声も聞かれた。
D 立憲民主党の猪奥美里さん(42)は前半からスポット演説に注力。党国対委員長を務める馬淵衆院議員も足繁く地元入りし候補者をサポートした。ただ野党共闘が実現せず、連合奈良は、推薦した猪奥さんへの支援はうまくいったとしているものの、国民民主党が自主投票を決めるなど、課題も残した。
C 共産党は参院選で9年ぶりの独自候補となる北野伊津子さん(46)を立てた。当初は野党統一候補づくりを探っていたが、結果的に「党の主張を訴えることができた」と前向きに捉えていた。
E 参政党の中村麻美さん(43)はインターネットを活用。優しく語りかけるような口調で一定の支持を受けた。またNHK党の冨田哲之さん(70)は選挙事務も自身で行う選挙戦だったが得票率1.3%を獲得。県内でも一定数の支持者がいると改めて感じた。
D 今回の選挙は県内ではNHK党を除いて、いずれも若く、また女性の候補者が半分を占めた。全国的にも次世代を担う人材への交代を進めるべきだ。
B 来春の統一地方選の候補者発掘を目的に、維新政治塾が8月に県内で初めて開講される。参院選での善戦は、党勢拡大に向けた活動を後押しするだろうと考えられる。