音羽山観音寺 後藤住職の花だより - テイカカズラ編 2022年初夏
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6月、雨上がりや強風のあと、音羽山観音寺の参道の途中に白い花が落ちていることがあります。2018年、記者が見つけてから何の花か知らずにいました。その花の名は住職が知っていました。
音羽山の森の中 自生する白い花
2018年、雨上がり。参道のコンクリートに3cm未満の小さな花が落ちていました。上を見上げてもスギの木。花をつけているような木を見つけることができませんでした。
あれから4年たち、住職が原色茶花大事典を広げているときに、その花が載っていたのです。
「ああ、テイカカズラね? 寺の中にもあるわよ。トイレのそばにあるイロハモミジに巻きついているわ」
ツル植物とは気づきませんでした。もっと詳しく話を聞こうとしたときに来客。予約で御祈祷のため登ってきた人たちが来たと、番犬オサムが吠えて知らせていました。
御祈祷を待つ参拝者
御祈祷が始まりました。その間にイロハモミジを探すことにしました。観音寺のトイレは住職の庭を突っ切ったところにあります。小さめのイロハモミジが2本。そのどちらにもツル植物は付いていませんでした。
納経所で仕事中。袈裟姿の住職
参拝客が絶えない寺に 石段の修理を終えて
普段着の作務衣(さむえ)に着替えた住職に、テイカカズラが分からなかったことを伝えると「それじゃあ見に行きましょうね」と言って、本堂前の石段を降りて行きました。
そういえば登山客用の移動式簡易トイレが1つ、門のところにありました。
「石段を修理したのよ。石がグラグラしていたから危なかったの。グラグラしていた時にリュウノヒゲを隙間に植えてたの。根が張って石を支えるからね。ところが鹿が食べちゃってね。なくなっちゃったの」
シャクナゲが咲いてた時、工事していたことを思い出しました。
きれいになった石段を降りると大きなイロハモミジがありました。何度もこの前を通過しているのにイロハモミジが分からなかったのは、大き過ぎて見上げないと紅葉と分からなかったのです。
「鎮守の森を守る団体があるのかしら。その人から、これは桜井市で一番大きなイロハモミジだと言われてね。それまでは枯れた枝とか切ったりしてたんだけど控えてるの」
テイカカズラはこのイロハモミジの幹を覆うようにツルを巻きつけていました。遠目で数個、花も咲いていました。
大きなイロハモミジに巻きつくテイカカズラ
あとで調べるとテイカカズラは有毒植物。ひょっとすると鹿に幹を食べられないように、守っているのかもしれません。
音羽山観音寺
山の中にある尼寺。桜井市南音羽
JR・近鉄桜井駅下車、桜井市コミュニティバス談山神社行、下居下車、約2km。火曜日閉門。17日の御縁日が火曜日の時は開門、翌日閉門