金曜時評

「闇バイト」の先は 人生を棒に振るな - 編集委員 辻 恵介

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 今年の新語・流行語大賞の候補に「ホワイト案件」があったが、「闇バイト」という言葉を聞かない日はない。現在は、関東一円で続発した強盗事件などで出てくるキーワードだが、全国各地でいつ発生してもおかしくない。

 

 Z世代(12~28歳前後)の新しい価値観を示す言葉に「タイムパフォーマンス(タイパ)」というのがある。「費やした時間と、それによって得られた効果や満足度の対比」、つまり「時間対効果」のことらしい。「コストパフォーマンスの時間版」という。

 

 コツコツと時間と労力をかけて実績を積み上げて成果(評価)を得る―といった考え方を教えられて育った昭和世代には、全くなじみのない概念かもしれない。親たちからよく言われた「若い時の苦労は買ってでもせよ」ということわざも、もはや死語なのかも。

 

 だがしかし、国民のほとんどが道を踏み外すこともなく、今日まで生きてこられたのは、こういった「規範」が身についていたからではないか。

 

 SNSの画面上の「高額報酬」などの表示につられ応募した若者たちは、闇バイトの先にある地獄まで考えることなく、提供した個人情報を“人質”にとられ、「家族に危害を加える」と脅されて、犯行に及ばざるを得ないように追い込まれていくという。安易にタイパに走り、犯罪の結果、その後の人生がどうなってしまうかまでは、考えが及ばないのだろう。

 

 10月21日に、山口県光市で関東地方の中学生ら3人が強盗予備容疑で逮捕された事件は、犯罪網の全国的広がりを示す衝撃的な案件だった。一方、警察庁が作製の闇バイトに加担しないように注意を促す動画は効果を発揮。7日までに、応募した本人・家族らについて46件の保護措置が講じられた。

 

 犯罪に走らないように、そして人生を棒に振らないように、社会ができることはないのだろうか。まずは中学校・高校・大学・各種学校といった教育現場で、警察関係者による話や、啓発ビデオ上映などの時間を確保し、地道に続けていくことが大事だろう。

 

 県内でも11日、奈良市の奈良育英高校の生徒・奈良署員ら16人が近鉄奈良駅前で、痴漢・盗撮などの撲滅と、若者を「闇バイト」に応募させないための啓発活動を行った。チラシなどを見せながら、「闇バイト」の危険性を説明し、犯罪に加担しないように訴えた。

 

 「闇バイト」という単語を聞かないですむような日が、一日も早く訪れることを切に願っている。

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