国原譜

「私達は、誕生するその瞬間から、誰かの…

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 「私達は、誕生するその瞬間から、誰かの願いを叶(かな)えているということだ」。一般社団法人「言の葉協会」が毎年募集している作文に、そんな一文を見つけた。

 

 作文を書いたのは中学2年の吉越千織さん。「赤ちゃんの泣き声」というタイトルで、昨年応募のあった2万点余りの中から最優秀賞に選ばれた。

 

 診察に訪れた耳鼻科医院で、開院前の列に並んだ女性の赤ちゃんが泣き止まないでいると、女性に順番を譲った高齢男性が「いいぞ、いいぞ、もっと泣け」と言ったという。

 

 「もっと泣いていいよ」というサイン。やがて一人また一人と順番を譲り、女性はいつの間にか先頭になっていた。吉越さんは赤ちゃんの泣き声は生きている証し、元気な産声は出産に関わる全ての人の願いだと冒頭の一文を書いた。

 モスクワ郊外で起きた銃乱射テロは、時間の経過とともに犠牲者が増えている。至近距離からためらいなく発砲する映像に戦慄を覚えた。

 

 犠牲者一人一人に産声を上げた瞬間があり、願いをかなえた存在だった。一体どれだけの願いと喜びがはかなくなったのか。(増)

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