先日、大阪で奈良市出身の俳優八嶋智人さ…
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先日、大阪で奈良市出身の俳優八嶋智人さんが出演した「桜の園」を観劇した。ロシアの劇作家チェーホフの戯曲を斬新な演出で知られるイギリス人演出家、ショーン・ホームズさんが手掛けた話題の公演だ。
借金の抵当に入り、間もなく競売にかけられる桜の園の女主人と周囲の人々の物語。演劇の素人にはやや難解だったが、女主人を慕う実業家を演じた八嶋さんの熱演に魅せられた。
桜の園はサクランボの果樹園のこと。劇を見ながら、ふと、ロシアのどこにあったのだろうと思った。
岩波文庫の「桜の園」の解説で翻訳者の小野理子さんは、モスクワなどでは寒すぎるので南ロシアと推定。実業家の仕事場がハリコフ(ハルキウ)から日帰りができない距離であることから、「ドン川支流のほとりの創造の地」と想像している。
ハリコフは現在、ウクライナ領でロシア侵攻の最前線となっている。そんな現実を突き付けられると、やや暗い気持ちになってしまう。
帝政ロシア末期の没落貴族の物語だが、チェーホフは喜劇として描いた。歴史の上では喜劇と悲劇は紙一重なのかも。(法)