円すいは上からは丸に見え、横からは三角…
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円すいは上からは丸に見え、横からは三角。斜めからは円すいと見えるように、多角的な視点が必要とはよく言われるが、このほど小説、映画、テレビ番組で一つの名作を味わった。
林芙美子の小説「放浪記」。第一次大戦後の厳しい時代に、貧困にあえぎ行商、女中、カフェの女給と様々な職業を転々としながら、作家を目指して強く生き抜いていく自叙伝。
1930年の出版当時からベストセラ―だ。ただ、断片的な日記が元で時系列がバラバラ。一読しただけでは人間関係が把握できない。
それを読み解いてくれたのが、NHKEテレで7月に放送された100分de名著。作品の持つ「ワル」の魅力から、芙美子の性格、生涯まで解説してくれた。
名匠・成瀬巳喜男監督の映画は1962年作。小説の毒気や微妙な心理描写は抜けているものの、分かりやすい展開と俳優陣の名演で楽しめる。
芙美子はライバル作家らの妨害をしたといわれ、川端康成は「どうか故人を許して貰いたいと思います」と弔辞。強烈な個性は、醜聞がすぐにネット上で炎上してしまう今の世の中なら果たして。(栄)