奈良勝手に住みます芸人サルインの高校野球 観戦記(下)
第106回全国高校野球選手権奈良大会で活躍した投手を振り返ると、奈良高の清水君や一条高の栗田君などが魅力的でしたが、彼らは速球でブイブイいわせていたわけではありません。ほかにも、桜井高の上島君は120キロに満たないストレートもありましたが、それよりさらに遅い球を織り交ぜた巧みな緩急で好投していました。
緩急と制球力
五條高の近藤君はテンポよくストライクゾーンに投げ込める制球力がありました。低反発バットに変わったことで、緩急や制球など、投手としての一芸が何か一つあれば活躍できるようになったのではないでしょうか。
これにより多くの投手に登板機会を与えることができますし、投手の頭数が増えることで1人にかかる負担が分散してケガの防止にもつながります。智弁学園と奈良大付属高も決勝までに4試合もこなしているのに投手陣は元気な状態で当日を迎えていたように思います。低反発バット、ありがとう。
深い内野守備
低反発バットの影響は内野手にも及んでいます。内野の間をゴロで破りそうな打球が失速して、セカンドやショートが深い位置で追いつくプレーが増えました。守備の上手(うま)い二遊間が多く目についたのですが、球際ギリギリのプレーが増えた分、処理する打球が増えたからかもしれません。なので守備の重要度が上がったように感じました。
三遊間の深い打球を何度も正確にさばいていた県立商業高の仲町君や、基本に忠実な細かい足運びで前後左右の難しい打球を処理する磯城野の中村君がとても記憶に残っています。
守備の安定
決勝戦は両チームが鉄壁でしたが中でも奈良大付属高の豆越君と智弁学園高の西川君は、ボールがグローブに吸い込まれていくような安定感で、全球児のお手本になる守備でした。
私も大学までずっと内野手だったので彼らを羨望(せんぼう)のまな差しで眺めながらスタンドで何度も「嘘やろ~」と叫んでしまいました。ほかにも守備の上手い選手をたくさん見つけることができてホクホクです。低反発バット、ありがとう。
甲子園でも成長
夏の甲子園大会が行われていますが、低反発バットになってどのように高校野球がどのように変化したのか、別の視点での発見があれば教えてください。そしてその点を押さえつつ、奈良県代表の智弁学園高を応援しましょう!
同校は質の高い投手が何枚もそろっていますし、それを支える守備陣は球際に強い選手が多いです。攻撃面では県大会2本塁打を放った佐坂君を筆頭に、ディフェンス最強の奈良大付属から5点を取るなど、打線にもすきがありません。
そして何より試合を重ねるごとに成長してきたチームです。甲子園では奈良大会で見た状態よりまたさらに上げ、ベスト8に進出しました。さらなる高みへ。がんばれ智弁学園!
サルイン
1990年12月生まれ。石川県津幡町出身。奈良教育大学に進んだことから奈良市に住むようになり、NSC(吉本総合芸能学院)を経て2015年にデビュー。「奈良勝手に住みます芸人」を名乗る。芸能活動とともに県内各地の高校野球部の練習に参加。ラジオ番組で高校野球について熱く語っている。