貫く「スタイル」 - 奈良クラブ
自分たちのサッカーを信じるパッション示す
今季初の3連敗を喫した奈良クラブ。好調だったホームでの戦いで、第23節のアスルクラロ沼津戦に続いて土をつけられた。
対戦相手のギラヴァンツ北九州は、5月の第13節以降は黒星のない状態で、現在リーグ5位。昨シーズンでリーグ最下位と苦杯をなめた経験を経て、増本浩平監督が「勝ちが重なると『自分たちのサッカー』に陥って同じことを繰り返しがちになるが、サッカーは対戦相手がいるスポーツ。相手のシステムが違えば、やり方を変えなければならない。毎節毎節、自分たちが何をすべきかを整理して臨む」と話すように、前回対戦時やここまでの奈良クラブのプレーを研究し勝利につなげた。
前半、奈良クラブは2歩、あるいは3歩先につながらないプレーが目立つなど、攻撃面で精彩を欠いた。北九州に対策され、奈良クラブの得意とする攻撃は要所でつながりを寸断された。結果、シュート数は北九州の8本に対して0本と流れをつかめないまま前半を終了したが、14分の先制ゴール以外は堅守で押し返し、追加点は許さなかった。
ここまでの戦いについて、フリアン監督は「容認できるものではないし、繰り返してはならない」とし、ハーフタイム中に「味方のサポートをうまく使い、自信を持ってボールを回せばプレスは回避できる。自分たちの中から自分たちのメンタリティを引き出してほしい」とげきを飛ばしたという。
後半、相手の狙いを把握し本来の攻撃力を徐々に取り戻した奈良クラブだったが、北九州はトップを独走する大宮アルディージャと並び、現在失点数16とリーグ最少を誇る、守りの堅さが特長のチーム。岡田優をはじめグスタフソンや都並らが何度も決定機を作ったが決め切れず、逆にファウルからPKを奪われ追加点を許し、突き放された。
奈良クラブはチームとしてのアイデンティティーを重視するスタイルを貫いてきた。それは得意とする勝ちパターンや勝利に向けての方法論にとらわれることではなく「自分たちのサッカーを信じる」という熱意、フリアン監督が口にしてきた「パッション」の部分にこそ、その本質があるということがよく分かる一戦だったように思う。北九州が相手に応じて柔軟に対応するスタイルを実現し勝ち点を重ねていることも見事だが、前半にあれだけ抑え込まれながらも、後半に相手の対策を超えて選手たちが躍動した奈良クラブもまた、本質に立ち返ることのできる強さを示したのではないだろうか。惜しむらくは相手ゴールのネットを揺らすことができなかった点だが、そこは次節以降に期待したい。
次節は31日アウェー戦、愛媛県のアシックス里山スタジアムで、現在勝ち点46でリーグ2位の強豪、FC今治に挑む。(岩本)
【次節】
FC今治
◆第26節◆
8月31日19時
アシックス里山スタジアム