「昭和温泉」にどっぷりと浸ったような心…
「昭和温泉」にどっぷりと浸ったような心地良さだった。国立文楽劇場(大阪市)で開かれた「上方演芸特選会」で、落語、漫才、講談、浪曲、奇術を堪能したのだ。
関西で演芸となると、漫才が圧倒的な人気で次に落語だろう。講談、浪曲、奇術は、失礼ながら時代遅れだと偏見を持っていたが、この日払拭された。
落語に優るとも劣らない講談の笑い、客席と一体となった奇術、朗々たる節回しの浪曲。生の舞台ならではの臨場感を満喫できた。
バラエティー豊かな寄席は「幕の内弁当」の味わいがあるのではないだろうか。何か昭和の時代にタイムスリップしたような温もりがあった。
7人の出演者はスター級こそいなかったが、中堅、実力派がそろっていたのではないか。たっぷりと約3時間楽しませてもらって、入場料2200円(65歳以上1600円)ならコスパがよい。国立の強みなのだろう。
観客はほとんど高齢者。何かといえば、アプリやQRコードが必要となる世の中に戸惑っている筆者のようなアナログ世代にとって、まさにオアシスであった。(栄)