道路運送業者の倒産増 好循環の構築カギ - 奈良経済をつかむ(24)
全国の上半期(1~6月)の倒産件数は前年同期比26.7%増の4887件となった。道路貨物運送業者の倒産件数が前年同期比39.8%増の186件となっており、このままの推移が続くと年間最多となった2009年の374件を上回る可能性がある。
時間外労働の上限規制により労働力が不足し、「人手不足」を原因とする運送業者の倒産が上半期としては過去最多の27件発生している。従業員10人未満の企業が全体の8割を占める。運送コストが上昇する中で適正な運賃価格への値上げがスムーズに進まず利益を確保しにくい事業環境が続いていることが背景にある。
「荷主からの輸送需要が鈍化している。運賃の値上げ交渉をすると他社にシェアを奪われる可能性がある」(奈良県内運送業者)。
奈良の景気動向を示す6月の景気(50より上であれば「良」、下であれば「悪」)は39.0と6カ月連続悪化しており、47都道府県の中で43番目に悪い水準となっている。
なお、景気の先行き見通しについて奈良の企業は近畿のほかの地域に比べて慎重にみているケースが多く、運送業者を取り巻く環境は今後も楽観視できるものではない。物流は経済にとって「血液」の役割を果たす重要な産業である。運賃値上げ→ドライバー賃上げ→雇用安定→物流の効率化・最適化、の好循環サイクルを構築し推進していく必要がある。運送業者の自助努力のみならず国や荷主などが積極的に関わって解決していくことが望まれる。(帝国データバンク調査課 碓井 健史)