大和古寺・お参り日記【42】 - 室生寺(下)

室生寺を訪れるといつも湿度を感じる。晴れた日も雨の日も、その感覚は変わらない。
室生に息づく水の神、竜神信仰は室生寺創建と強く関わっているとされる。竜穴に住む竜王を守護するため、同じ室生の龍穴神社に続いて建てられたとの説もあるという。
同寺には、龍穴神社に向かって遥拝する社(やしろ)が鎧(よろい)坂の中腹にある。神社の秋祭りでは、「七度半の使い」の儀式があり、同寺の管長がお渡りを出迎えて、神事が行われる。
山岡淳雄執事によると、社の向かいにある弥勒堂(鎌倉時代)は、雨乞いの祈とうが行われていた場所ではないかという。弥勒堂はもともと南向きに建てられていたが、いつの時代か竜穴がある東向きに変えられているのだそう。1953(昭和28)年の改修工事で3万7千体もの籾塔(もみとう)が発見されており、五穀豊穣(ほうじょう)の祈願が行われていたと推測される。「昔は車で竜穴へ行くこともできず、人が集まる寺内に遥拝所を設けて僧侶が祈とうを行っていたのでは」と山岡執事。



国宝の五重塔(平安時代)の九輪の頂上には、火炎をかたどった水煙ではなく、水を入れる宝瓶(ほうびょう)が取り付けられていると教えていただいた。
