金曜時評
問われる西口会長 - 主筆 甘利 治夫
こんな悪質な商売が許されていいのか。
奈良市杉ケ町の不動産会社「公誠」と同社長の松川公明氏(70)個人による違法建築問題は、まさに犯罪といえる。しかも、これを、一体、、となって推し進めたといえるほど、密接かつ重要な役割を果たしてきたのが、南都銀行(当時・西口広宗頭取)と知れば、あ然とせざるを得ない。
すでに明らかになった違法建築は、松川氏が所有する「杉ケ中町ビル」をはじめとした7件。それぞれ建築基準法、不動産登記法、地方税法や市開発指導要綱違反に該当する建物ばかりだ。ほとんどが新築物件で、市から建築確認の許可をとり、建物を建設した。ところが許可内容とは別の建物を建てたり、あるいは改装し、完成後の工事完了届を出さず、建築基準法で定められた検査済証の交付もないまま利用、賃料を得るというあくどい手口だ。
とくに悪質なのは、松川氏が創業した建設機械リース会社「奈良車輛」(同市古市町)のケースで、同社の敷地は平成13年5月に市街化区域に変更されたが、それまで調整区域だった土地に何棟もの事務所や工場、倉庫などを建設して事業をしてきた。もちろん建築確認の申請もなく、当然のことながら検査済証の交付もない。都市計画法に違反する内容で、本紙の取材や報道で、あわてて建物の解体を始め、現在も解体作業を続けている。
こうした違法建築物の新築などに、南都銀行がすべての融資にかかわってきた。それぞれの土地や建物を共同担保として極度額も億単位の根抵当権を設定しており、これまでの融資総額は実に20億円に達するとみられる。
この融資が、一つの事例であるなら「審査ミス」と逃げられるし、少額の融資なら「支店長決済だった」と言い逃れもできよう。本紙が取材を進めるなかで、まだまだ違法物件は相当数あることが分かっているし、そのすべてに同行が融資にからんでいる。しかも億単位の融資内容とみられるから、同行のトップレベルの関与なくして融資はありえない。南都銀行ほど審査が厳しく、調査能力のある銀行が、こんな不法に加担、助長してきたことは大問題だ。
銀行業という「商売」をみると、県民からの預金は「仕入れ」で、融資は「販売」といえる。その差額を利益とする「商売」だ。ご承知のように、わずか「コンマ以下の預金利息で仕入れをし、その何十倍もの利息をつけて販売(融資)する」のだから、こんな利益率の高い商売は他に例がない。
それはともかく、預金者である県民や、同じく融資を受けている経営者に対して、この問題を説明する義務が南都銀行にある。違法建築物への継続的な融資、松川氏への特別扱い、その経緯と、最終判断の責任者は誰なのかを知りたい。そして今度の問題で、県を代表する地方銀行として、どうしていくのか、トップとしての責任をどうするのかだ。
現会長の西口氏は、平成8年に代表権のある専務取締役となり、翌年から11年間、頭取として君臨してきた。今年6月に植野康夫氏に頭取を譲ったが、代表権のある会長となりトップの座は揺るぎない。この違法建築問題が、西口氏の同行における「黄金時代」といえる実質トップの時代に重なる。だから西口氏の責任を問わざるをえない。
西口氏といえば、奈良商工会議所会頭をはじめ各種団体の要職を数え切れないほど務めている。また平成11年から2期6年間、県公安委員となり2回も委員長職にあった。「正義と法を守る県民の総本山」だ。高潔な人格であることはもちろん、順法精神は誰よりも厳しいはずだ。ましてや自らと、自らの企業には、なおさら厳しく律しなければならない。
現在進行形のこの問題は、預金者である県民と融資先に対する「裏切り」だ。もし「たいしたことはない」と、甘く考えているとしたら、とんでもない話だ。
商工会議所をはじめとした経済団体の要職を南都銀行が独占していることの問題については、またの機会に触れるが、違法建築問題に対する県民・読者の反響の大きさからも、南都銀行の対応を注視していることが分かる。西口会長自らが会見に応じて、説明する義務があり、その責任をどう果たすかに絞られる。
奈良市杉ケ町の不動産会社「公誠」と同社長の松川公明氏(70)個人による違法建築問題は、まさに犯罪といえる。しかも、これを、一体、、となって推し進めたといえるほど、密接かつ重要な役割を果たしてきたのが、南都銀行(当時・西口広宗頭取)と知れば、あ然とせざるを得ない。
すでに明らかになった違法建築は、松川氏が所有する「杉ケ中町ビル」をはじめとした7件。それぞれ建築基準法、不動産登記法、地方税法や市開発指導要綱違反に該当する建物ばかりだ。ほとんどが新築物件で、市から建築確認の許可をとり、建物を建設した。ところが許可内容とは別の建物を建てたり、あるいは改装し、完成後の工事完了届を出さず、建築基準法で定められた検査済証の交付もないまま利用、賃料を得るというあくどい手口だ。
とくに悪質なのは、松川氏が創業した建設機械リース会社「奈良車輛」(同市古市町)のケースで、同社の敷地は平成13年5月に市街化区域に変更されたが、それまで調整区域だった土地に何棟もの事務所や工場、倉庫などを建設して事業をしてきた。もちろん建築確認の申請もなく、当然のことながら検査済証の交付もない。都市計画法に違反する内容で、本紙の取材や報道で、あわてて建物の解体を始め、現在も解体作業を続けている。
こうした違法建築物の新築などに、南都銀行がすべての融資にかかわってきた。それぞれの土地や建物を共同担保として極度額も億単位の根抵当権を設定しており、これまでの融資総額は実に20億円に達するとみられる。
この融資が、一つの事例であるなら「審査ミス」と逃げられるし、少額の融資なら「支店長決済だった」と言い逃れもできよう。本紙が取材を進めるなかで、まだまだ違法物件は相当数あることが分かっているし、そのすべてに同行が融資にからんでいる。しかも億単位の融資内容とみられるから、同行のトップレベルの関与なくして融資はありえない。南都銀行ほど審査が厳しく、調査能力のある銀行が、こんな不法に加担、助長してきたことは大問題だ。
銀行業という「商売」をみると、県民からの預金は「仕入れ」で、融資は「販売」といえる。その差額を利益とする「商売」だ。ご承知のように、わずか「コンマ以下の預金利息で仕入れをし、その何十倍もの利息をつけて販売(融資)する」のだから、こんな利益率の高い商売は他に例がない。
それはともかく、預金者である県民や、同じく融資を受けている経営者に対して、この問題を説明する義務が南都銀行にある。違法建築物への継続的な融資、松川氏への特別扱い、その経緯と、最終判断の責任者は誰なのかを知りたい。そして今度の問題で、県を代表する地方銀行として、どうしていくのか、トップとしての責任をどうするのかだ。
現会長の西口氏は、平成8年に代表権のある専務取締役となり、翌年から11年間、頭取として君臨してきた。今年6月に植野康夫氏に頭取を譲ったが、代表権のある会長となりトップの座は揺るぎない。この違法建築問題が、西口氏の同行における「黄金時代」といえる実質トップの時代に重なる。だから西口氏の責任を問わざるをえない。
西口氏といえば、奈良商工会議所会頭をはじめ各種団体の要職を数え切れないほど務めている。また平成11年から2期6年間、県公安委員となり2回も委員長職にあった。「正義と法を守る県民の総本山」だ。高潔な人格であることはもちろん、順法精神は誰よりも厳しいはずだ。ましてや自らと、自らの企業には、なおさら厳しく律しなければならない。
現在進行形のこの問題は、預金者である県民と融資先に対する「裏切り」だ。もし「たいしたことはない」と、甘く考えているとしたら、とんでもない話だ。
商工会議所をはじめとした経済団体の要職を南都銀行が独占していることの問題については、またの機会に触れるが、違法建築問題に対する県民・読者の反響の大きさからも、南都銀行の対応を注視していることが分かる。西口会長自らが会見に応じて、説明する義務があり、その責任をどう果たすかに絞られる。