金曜時評
農林業へ活路求む - 論説委員 寺前 伊平
米国発の金融危機がもたらした株価下落で、景気はさらに悪化している昨今。その背後で、とくに不動産業や建設業などの倒産が相次いでいる。景気の先行き不透明感は、将来への不安からくるあせりへと拍車をかけ、改革への足がかりさえとれないでいる。
建設業に関していえば、不況と公共工事削減という背景のなかで共倒れを防ぐために依然として談合が絶えない。県内でも宇陀・東吉野地域であった大がかりな談合は、そのことを象徴する事例である。35社が指名停止処分となり、建設業の暗いイメージを先行させた。
国土交通省などの調べで近畿2府5県(福井県を含む)の建設業界をみてみると、平成19年度の建設業者数は約9万8000業者、建設投資額は同年度見込みで7.1兆円。これはピーク時の平成8年度(11万業者、12.9兆円)と比較して、それぞれ約10%減、約55%減となっている。深刻なのが倒産件数。ここ数年は横ばいで推移してきたが、昨年は2府5県で計1078件となり、4年ぶりに1000件を超えた。そこには、採算を度外視した著しい低価格の落札(ダンピング)の実態が見え隠れする。
業者間の過当競争によるダンピングにより、年々単価は下がる一方。下がったままで次年の比率が出される。ダンピングの中の赤字受注。100%受注でも利益が出ないという現実が横たわる。業者は生き残れるかどうかの瀬戸際までに追い込まれている。
そんな中、近畿2府5県で建設業を営む若手たちが立ち上がった。建設業の現状を広く一般に知ってもらうことで、これから建設業が必要とされるべき姿を追求していこうという前向きな試みを打って出たのだ。葛城市の吉井久尚・吉井建設社長が会長を務める近畿建設青年会議が、国交省近畿地方整備局やマスコミ関係者を呼んで大阪市内で意見交換の場をもった。
地震や水害などの災害復旧時の緊急出動や冬場の除雪作業、積雪・凍結時の道路融解剤散布作業などで奉仕活動も多い建設業。このことが一般に知られていないのも確かだ。一企業としてではなく、「地域建設企業」という大きな枠組みの中で地域生活の安全の担い手として、活動を展開していることへの地域住民の理解は欠かせない。それが浸透していってこそ、建設業
のもつイメージが変わってくるに違いない。
地域建設企業としてあるべき姿とは何か。現況では公共工事が4割減っている。それに比べて働いている人は2割減のまま。建設業に携わる人、技術、機械をそっくり疲弊している奈良県の農林業に注入することはできるはずである。
林業でいえば、戦後大量に植林されたスギ、ヒノキが成長し、製材として利用できる段階であるにもかかわらず、担い手の高齢化と後継者難で伐採や下草刈りができないでいる。間伐も思うに任せず、荒廃がつづいている森林内に建設業の力を借り、未整備の木材搬出道路を切り開いて拡幅。車が余裕をもって通れる道路網や、地域によっては架線路網を整備していけば、材木の安定供給ができるはずである。こうなれば、輸入材にも太刀打ちでき加工・流通の大規模化と合理化が可能となる。
農業でいえば、耕作放棄地の有効利用を所有者と一緒になって考え、そこに建設業の機械力を入れて作付けする。生産物の低コストな販路を開拓していけば、収入増大につながるはずである。そのシステムづくりが急務である。
そのためには、国交省、農水省、環境省など建設・農林業に関連する省庁が、縦割りの垣根を越えた緩やかな行政が必要となってくる。法整備も大事だろうが、危機的状況にある建設業に明るい光を灯すための国策を具体的に示すべきである。
建設業の担い手も今、一世から二世に代わろうとしている。「目に見えない」ところの社会貢献から、今後は「目に見える」ところで地域建設企業として社会的責任を果たしていくまさにその時期にきている。そういう意味でも、近畿建設青年会議の理念にもとづいた活動に建設業の今後の活路を見いだしたい。
建設業に関していえば、不況と公共工事削減という背景のなかで共倒れを防ぐために依然として談合が絶えない。県内でも宇陀・東吉野地域であった大がかりな談合は、そのことを象徴する事例である。35社が指名停止処分となり、建設業の暗いイメージを先行させた。
国土交通省などの調べで近畿2府5県(福井県を含む)の建設業界をみてみると、平成19年度の建設業者数は約9万8000業者、建設投資額は同年度見込みで7.1兆円。これはピーク時の平成8年度(11万業者、12.9兆円)と比較して、それぞれ約10%減、約55%減となっている。深刻なのが倒産件数。ここ数年は横ばいで推移してきたが、昨年は2府5県で計1078件となり、4年ぶりに1000件を超えた。そこには、採算を度外視した著しい低価格の落札(ダンピング)の実態が見え隠れする。
業者間の過当競争によるダンピングにより、年々単価は下がる一方。下がったままで次年の比率が出される。ダンピングの中の赤字受注。100%受注でも利益が出ないという現実が横たわる。業者は生き残れるかどうかの瀬戸際までに追い込まれている。
そんな中、近畿2府5県で建設業を営む若手たちが立ち上がった。建設業の現状を広く一般に知ってもらうことで、これから建設業が必要とされるべき姿を追求していこうという前向きな試みを打って出たのだ。葛城市の吉井久尚・吉井建設社長が会長を務める近畿建設青年会議が、国交省近畿地方整備局やマスコミ関係者を呼んで大阪市内で意見交換の場をもった。
地震や水害などの災害復旧時の緊急出動や冬場の除雪作業、積雪・凍結時の道路融解剤散布作業などで奉仕活動も多い建設業。このことが一般に知られていないのも確かだ。一企業としてではなく、「地域建設企業」という大きな枠組みの中で地域生活の安全の担い手として、活動を展開していることへの地域住民の理解は欠かせない。それが浸透していってこそ、建設業
のもつイメージが変わってくるに違いない。
地域建設企業としてあるべき姿とは何か。現況では公共工事が4割減っている。それに比べて働いている人は2割減のまま。建設業に携わる人、技術、機械をそっくり疲弊している奈良県の農林業に注入することはできるはずである。
林業でいえば、戦後大量に植林されたスギ、ヒノキが成長し、製材として利用できる段階であるにもかかわらず、担い手の高齢化と後継者難で伐採や下草刈りができないでいる。間伐も思うに任せず、荒廃がつづいている森林内に建設業の力を借り、未整備の木材搬出道路を切り開いて拡幅。車が余裕をもって通れる道路網や、地域によっては架線路網を整備していけば、材木の安定供給ができるはずである。こうなれば、輸入材にも太刀打ちでき加工・流通の大規模化と合理化が可能となる。
農業でいえば、耕作放棄地の有効利用を所有者と一緒になって考え、そこに建設業の機械力を入れて作付けする。生産物の低コストな販路を開拓していけば、収入増大につながるはずである。そのシステムづくりが急務である。
そのためには、国交省、農水省、環境省など建設・農林業に関連する省庁が、縦割りの垣根を越えた緩やかな行政が必要となってくる。法整備も大事だろうが、危機的状況にある建設業に明るい光を灯すための国策を具体的に示すべきである。
建設業の担い手も今、一世から二世に代わろうとしている。「目に見えない」ところの社会貢献から、今後は「目に見える」ところで地域建設企業として社会的責任を果たしていくまさにその時期にきている。そういう意味でも、近畿建設青年会議の理念にもとづいた活動に建設業の今後の活路を見いだしたい。