飛鳥荘、伊藤社長-コロナに立ち向かう(6)

興福寺五重塔が目に飛び込む客室。猿沢池に近く、奈良市観光の中心地にある老舗旅館「飛鳥荘」(同市高畑町)は、コロナ禍を受け、宿泊客の安心につながる宿泊プランを導入したり、原点に立ち返って旅館コンセプトを再構築したりと、「今できること」に全力を挙げる。
昨年3月ごろからコロナ禍の影響が出始めた。県内に緊急事態宣言が出された同4月には宿泊客が激減。翌月のゴールデンウイーク明けから約1カ月半、休業することにした。
政府の「Go To トラベル」や県の「いまなら。キャンペーン」により、昨年11月にはコロナ前の同月比で客足が8割程度まで戻ったが、両事業が停止すると再び落ち込んだ。
今年に入っても、コロナ前の同月比で売り上げ7~8割減の月が続いている。若草山焼きや「なら燈花会」など、全国に知られた年中行事も中止となり、例年は満室となるお盆休みも宿泊客は5割ほどにとどまったという。
伊藤隆司社長(56)は「これ以上コロナ禍が長引くと本当に厳しい」と話す。
ただ、今できることにも全力で取り組んでいる。宿泊客に安心して泊まってもらおうと、昨年夏に3密回避の宿泊プランを導入。客室とは別に夕朝食用の個室を用意し、追加料金なしで興福寺五重塔を望む貸切風呂が利用できる。
県の補助金を利用して、大浴場の混雑状況が客室のテレビで確認できるシステムも入れた。
また、コロナ禍で地元住民の各種行事に伴う会食
利用もなくなった。そこ
で、昨年秋から仕出し弁当の販売を始めた。飛鳥荘の料理人による本格料理が家庭などで手軽に味わえるとあって、リピーターも多いという。伊藤社長は「コロナ禍がなければ仕出し弁当の販売はなかった」と話し、逆境をチャンスに変える。
コロナ収束後を見据え、飛鳥荘のコンセプトを再構築。従業員も交えて検討を重ね、「温もりあふれる料亭旅館」に決めた。「料理と風呂という旅館の強みを打ち出しつつ、宿泊客のニーズに合ったサービスを提供していきたい」と伊藤社長。老舗旅館の取り組みは続く。