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【動画あり】GPS調査で見えた奈良の鹿と共存する未来

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 奈良公園の鹿の首にGPS発信器を付けた行動調査は、北海道大学と奈良の鹿愛護会との共同研究として2018年から始まり、現在まで約7年に渡り継続されている。研究の中心メンバーである北海道大学特任助教の立澤史郎さんに話しをうかがった。

 

研究の中心メンバーである北海道大学特任助教の立澤史郎さん

 

 大阪出身の立澤さんは幼少期から奈良公園の鹿に親しみ、大学では生物学を専攻し、奈良の鹿をテーマに研究を始めた。1987年には「ディアマイフレンズ」という鹿の調査グループを設立し、市民と共に10年間にわたって調査活動を実施。また奈良県の「奈良のシカ保護管理計画検討委員会」の委員でもあり、奈良公園のシカと長年深く関わり続けてきた。

 

GPS発信器を付け「1番さん」の愛称で親しまれている雌鹿

 

メス鹿が子育てする「大切な場所」

 GPS調査の主なる目的はメス鹿が子供を産んで子育てをしているエリアを特定すること。現在まで発信器を付けた合計10頭は全て子育てをする、もしくはしているメス鹿に付けられた。その結果、メス鹿の行動範囲は約500から600メートル四方と狭いことがわかった。

 

 10頭の位置情報データ(鹿の保護のため画像処理をしています。)

 

 これが10頭分の行動データで、色の違いは個体の違いを示しており特定の場所で色の重なるところがあり、そこが子育てエリアであることもわかってきた。 立澤さんは「調査の1番の目的である、メス鹿が出産や子育てに使用するエリアを特定できたことで、鹿の集団を今後も維持するために保護すべき重要なエリアがわかり、人と鹿の共存策の提案に役立つ」と語る。

 

新型発信器で次のステージへ 

 当初の目的は、ほぼ達成され、現在「1番さん」の愛称で親しまれているメス鹿1頭のみがデータ収集を継続している中、次の段階の調査に向けて、新しい発信器の準備が整いつつある。

 

 新しい首輪にはApple社のBluetooth技術を利用した位置追跡デバイス「AirTag」を組み込み、重さを従来の約290gから約80gと3分の1以下に軽減。いくつかの課題はあるものの、コストも大幅に抑えられたことで、今後は調査対象の範囲を広げ、またオス鹿にも使用し、さらなる生態調査を進めていこうと考えている。

 

Apple社のAirTagを組み込んだ新しい首輪(左)とこれまでのGPS首輪(右)

 

人と鹿の共存のために

 立澤さんは、「人と鹿が共存するために、これからはエリアごとの棲み分けが必要」とし、最も重要な出産や子育てのための優先エリア、鹿せんべいを通じて、鹿と接する交流エリア、そして本来の野生の姿を、遠くから静かに見守る観察エリアといった、ゾーニングの重要性を説く。

 

 また近年のインバウンドの激増で植物が踏みつけられ、一部のエリアでは植物が育たない状態にまで至っている。鹿の個体数も増えていることから、鹿の食糧不足が深刻化しており、森の再生と環境保全に向けたエリア分けも急務だと言う。

 

 奈良県は2013年、「100年後も、奈良の鹿が今と変わらず奈良公園に元気で暮らしていること」を目標に掲げた。新たな研究成果が、人と鹿とが共生できる未来につながることを期待したい。

 

夕方、森に帰る鹿の群れ

 

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