逢香の華やぐ大和 曽爾高原と曽爾村のトマト
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可憐に揺れる薄紫色
初秋に見つけた珍しい花
曽爾高原に到着。両手を広げて自然の香りを満喫する逢香さん
奈良市の観光大使でもある書家の逢香さんが県内の社寺や名所を訪ね、地域の魅力を発信する「逢香の華やぐ大和」。今回はススキの群生で知られる曽爾高原へ。初秋の高原で珍しい花を見つけました。(滝村正巳)
まだまだ日差しが厳しい曽爾高原
秋が深まると、見渡す限り黄金色のススキの穂が揺れる曽爾高原。今の時期はまだ穂も小さく丈も低い。
逢香さんは高原の遊歩道に足を踏み入れ「やってきました。曽爾高原です。この時期、村人もあまり知らないという花が咲いているそうです。調査しましょう!」と元気に歩き出した。
逢香さんのお目当てはイネ科の植物の根に寄生する「ナンバンギセル」。ハマウツボ科の1年草で、夏から初秋にかけて、茎の先端に筒状で淡紫色の花を咲かせる。葉がなくて光合成ができないため、寄生した植物の根から栄養分を摂取する。花と茎の形をたばこのきせるになぞらえその名がついた。
曽爾高原には、ハイカーなどが訪れていて若者も多い。二人連れの大学生に尋ねたりしながら1時間以上ナンバンギセルを探し回っていた逢香さん。突然「見つけました! 多分そうです!」と叫んで草むらを指差した。
「ナンバンギセルを見ませんでしたか」。散策に来ていた女子大生に尋ねる逢香さん
「見つけました!」探し求めたナンバンギセルを発見
そこには高さ10センチほどの細い茎に2センチほどの小さな花をつけたナンバンギセルが。「やっと見つけました! きれいな紫色。小さく可憐で下向きに咲くんですね。万葉集にも登場します」と興奮気味に話しながらさらに探索を続けて数カ所発見。数本が群生している所もあった。
紫色が美しいナンバンギセルの花
「また見つけた!」と喜ぶ逢香さん
逢香さんは「ナンバンギセルは寄生植物なので、採取しても生きられません。見つけたらそっと観察するだけにしてほしい」と呼びかけた。
トマト農家で新鮮トマトに舌鼓
可憐な花を眺めて心が満たされた逢香さんは、曽爾高原から下って地元のトマト農家、鬼塚幸太朗さん(35)のトマトハウスを訪れた。秋口だがトマトはまだまだ出荷できるそう。逢香さんがその理由を尋ねると、「ここは標高が高いので気温が低く、真夏を乗り切って秋まで収穫できます。昼夜の寒暖差も大きく、ストレスを受けて濃厚なトマトができるので完熟してから出荷します」と鬼塚さんが教えてくれた。鬼塚さんの勧めでもぎ立てを味わった逢香さんは「おいしい! すごく濃厚、フレッシュ!」と満面の笑顔。
曽爾村のトマト農家、鬼塚さん(右)から話を聞く
栽培ハウスでもぎ立てのトマトに舌鼓
鬼塚さんは地域おこし協力隊として4年前に東京から家族3人で曽爾村に引っ越し、トマト栽培を修業、昨年、ハウスを16棟建てて独立した。
ボリューム満点ハンバーガー
鬼塚さんに次に案内されたのは街道沿いにあるかわいいピンク色のレストラン「DRIVE IN オニユポス」。鬼塚さんと仲間たちが、トマトの加工品などを提供するこのドライブインを今月開店したそう。
今月開店したばかりのレストラン「DRIVE IN オニユポス」
規格外のトマトを使ったバーベキューソースを開発し、そのソースとフレッシュトマト、自家製ベーコンを使ったBBQバーガーが一番人気だ。鬼塚さんは以前、ハードロックカフェで調理を担当していたこともあり、料理も大好きという。
鬼塚さんが調理したBBQバーガーを前にした逢香さんは「大きい! アツアツ」と声を上げ、「いただきます!」とガブリ。「とってもおいしい! 濃厚なトマトとジューシーなお肉がよく合う、大好き」と感動した様子でほおばった。
感動のBBQバーガー
逢香の目
曽爾の山々を背景に完成した書画を手にする逢香さん
ナンバンギセルを探しにきた逢香さんは「可憐な花に出合えました。探して探して見つけることができ、とてもうれしかった。濃厚なトマトにも、おいしいおいしいバーガーにも出合えました。曽爾の新しい過ごし方を見つけました」と笑顔で語り、トマトを描いたハガキ大の色紙に「曽爾のはな バーガー トマト 見つけた!」としたためた。
メモ
◆ぬるべの郷・曽爾村
県の東北端、三重県境に位置する、大自然に恵まれた人口約1500人の村。奈良時代から平安時代にかけてウルシを扱う役所「塗部造(ぬるべのみやつこ)が置かれた。大阪、京都から伊勢参りに向かう「伊勢本街道」沿いの宿場町としてもにぎわった。2009年に「日本で最も美しい村」連合に加盟。山々に囲まれ水が豊富。曽爾高原湧水群は「平成の名水百選」に選ばれている。曽爾高原の近くには、曽爾高原温泉「お亀の湯」、地ビールや農産物を販売するファームガーデンがある。
◆DRIVE IN オニユポス
曽爾村今井214。曽爾高原へは車で約10分。バーベキューソースは店内で販売しており、350ミリリットル850円。
◆書家/逢香(おうか)
奈良市在住。奈良教育大学伝統文化教育専攻書道教育専修卒業。6歳から書道を学ぶ。2020年、橿原神宮御鎮座130年記念大祭の題字を揮毫(きごう)。同年、元興寺(奈良市、世界遺産)の絵馬の書・画・印デザインを手掛ける。大学時代に個性豊かな妖怪に興味を持ち、「妖怪書家」としても活動。奈良市観光大使、(一社)モノモン代表。
「逢香の華やぐ大和」は奈良新聞社とNHK奈良放送局のコラボ企画で毎月1回掲載。NHK「ならナビ」(午後6時30分~)内で2024年9月10日に放送されました。