奈良市東九条町の小さなお堂に、大小2体…
奈良市東九条町の小さなお堂に、大小2体の弘法大師像が安置されている。地元の有志が堂内を掃除したり花を供えたりして大切に守ってきた。
堂内には役行者(えんのぎょうじゃ)像や2体の鬼像も祭られており、大峰山の蔵王権現を信仰する行者講があったのだろう。いずれも江戸時代のもので傷みが激しく、地元の有志が護摩供養を営んで修理費を募ることになった。
授与する護摩木は1本500円。お堂も基礎が崩れており、像の修理と合わせるとかなりの費用になりそうだが、「地元の文化財を後世に」との強い思いが有志を動かした。
薬師寺管主だった故高田好胤師は「お写経勧進」によって金堂や西塔を復興したことが知られる。一巻一巻の納経料の積み重が伽藍(がらん)をよみがえらせた。
護摩供養は11月2日。6人の山伏が参加する本格的なものになるといい、参拝者が願いを託した護摩木の火が、大きな炎となって燃え上がることだろう。
文化財指定はなくても民間信仰の姿を映す貴重な文化財。小さな一歩がそれを守り伝える大きな歩みとなる。(増)