金曜時評

山下県政 求めたい「和」の姿勢 - 論説委員 増山 和樹

関連ワード:

 日本維新の会の公認を受けた山下真氏が県知事に就任して間もなく1年になる。4期にわたった荒井県政を根本から見直すスクラップ型の県政運営は、歴代のどの知事とも異なり、民間会社の経営者に近い。スクラップに続くビルドも平行して示されているが、公約を掲げて押し通る姿勢は、影響を受ける地元との間に強い摩擦を引き起こしている。県を代表する知事という立場にあって、相手を突き放す姿勢は問題だろう。

 

 その一つが五條市におけるメガソーラーの建設だ。県が大規模広域防災拠点の設置を予定していたゴルフ場跡地などに関西でも最大規模のメガソーラーを整備するという。昨年12月の段階では、県の防災担当部局が救助活動や物資輸送の拠点となる「中核的広域防災拠点」の整備を同用地に提案していたことが明らかになっている。

 

 なぜメガソーラーでなければならないのか、災害時に蓄電池をヘリコプターで運んで避難所などで活用するプランにどこまで現実性があるのか、不透明感は拭えない。住民は大規模広域防災拠点のためにと土地を手放した。知事にとって大型プロジェクト再検討という公約実現の一環であっても、住民にとっては信義違反だ。知事自ら出向いた2月の地元説明会では「県は信用できない」など厳しい意見が相次ぎ、「もう少し話を聞いてください」と食い下がる人もいたという。終了後、山下知事は「反対があっても進める」と報道陣に明言した。

 

 メガソーラーには景観や防災上の問題が指摘されているほか、ソーラーパネルに有害物質が含まれる場合もある。県内でも民間の設置計画に反対運動が起きており、住民が不安を募らせるのは当然だ。メガソーラー以外に選択肢はないのか、どのようにすれば一致点を見いだせるのか、結論を急がず住民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける必要がある。メガソーラーを抱えた暮らしを余儀なくされるのは住民自身だ。

 

 山下知事の押し切る姿勢は運転免許センターの移転を巡る橿原市とのやりとりでも際立つ。計画撤回を求める亀田忠彦市長の要望に対し、住民や首長の同意を求めるものではないと突っぱねた。

 

 同様の場面は山下知事の県政運営で今後も出てくると思われる。改革に摩擦はつきものだが、理詰めだけで物事は進まない。推進力には「和」の要素も必要ではないか。山下知事に1票を投じなかった人を含めた県全体のリーダーであることを忘れないでほしい。

こちらの記事も読まれています

特集記事

人気記事

  • 奈良県の名産・特産品・ご当地グルメのお取り寄せ・通販・贈答は47CLUB
  • 出版情報 出版物のご購入はこちらから
  • 特選ホームページガイド