金曜時評

議員の兼業緩和 住民理解と両輪で - 論説委員 増山 和樹

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 サントリー食品インターナショナルが30代~60代の男女1500人を対象に「大人がなりたい職業」を聞いたアンケートの結果が11月に発表された。「どんな職業にでもなれるとしたら」との前提で尋ねた質問では、1位から順に医師、社長・起業家、パイロットと続き、10位に政治家が入った。

 

 トップ10は他に公務員や看護師、弁護士、芸能人など「なるほど」と思う結果だったが、政治家は少々意外だった。選んだ職業になりたい理由は1位の「やりがいがある」のほか、「人から感謝される」なども上位にあり、政治家につながる要素かもしれない。

 

 回答者がイメージした政治家に市町村議は入っていただろうか。地方議員のなり手不足解消を目指す改正地方自治法が10日の参院本会議で可決、成立した。個人事業主が議員を兼務しやすいようにするためで、自治体との年間取引額が300万円以下なら容認されるようになる。来春の統一地方選挙までに施行するという。利害関係が公正な議論に影響するのを避けるため、これまで自治体と取引のある個人事業主は議員との兼業が禁じられていた。

 

 年4回の定例議会やその間の臨時議会は平日に開かれるため、一般的なサラリーマンでは安定した出席が難しい。多くの場合、会社を退職するなどして立候補することになるが、個人事業主なら事業を続けながら政治活動を展開することも可能だ。今回の法改正で一定の道が開かれたが、小規模な商店主などにとって300万円は決して小さな数字ではない。議会での議論や行政監視に影響することがないよう、各議員が改めて襟を正す必要がある。

 

 地方議員のなり手不足の背景には、議員報酬の低さがあるが、アンケートで1位だった「やりがい」を感じる人が少なくなったとも言えるのではないか。最近は「議会だより」などの広報媒体を一新したり、ホームページで積極的に発信する議会も増えてきた。ただ、地方議会について、住民が無関心だったり距離感が縮まらない側面もあるように思う。

 

 自治体の血となる年間予算は議会で可決されなければ成立しない。予算や条例の制定など、首長側の提案を審議し可否を判断するのは各議員の仕事だ。議会には調査権や監視権もある。

 

 議員のなり手不足は選挙の無投票や行政運営の緩みにつながる。制度的な対応策と併せ、地方議会への関心を高める取り組みが不可欠だろう。

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