金曜時評

地域防災力の充実「広域」で考えよう - 編集委員 辻 恵介

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 最近、防災訓練の記事が3面(第1社会面)に相次いで掲載された。「南海トラフ巨大地震」の、30年以内にマグニチュード(M)8~9級が70~80%の確率での発生が予測される中、毎日のように全国各地で地震が起きている。また、地球温暖化の影響等による台風や線状降水帯の発生など「想定外」の事象が起こる自然環境にさらされていることを忘れるな―といった警鐘のように思えた。

 

 奈良市のロートフィールド奈良外周広場を主会場にした日本水道協会の県・関西地方支部による合同防災訓練には、近畿2府4県の34事業体から約120人が参加。災害時の円滑な給水応援体制の確立に向け、地域災害拠点病院に設定した4拠点(県総合医療センター、京都山城総合医療センターなど)への運搬給水と、避難所へ向けた応急給水の2つの訓練を実施した(24日付)。

 

 インフラの中でも、水道は最優先に確保したい設備。断水や道路の寸断などを想定し、事前の訓練で、手順や課題などをチェックしておくことは大事なことだ。

 

 一方、総務省総合通信局は2日間にわたり、十津川村と共同で、大規模災害時の通信確保を目的にした防災訓練を行い、相互の連携を強化した。道路や通信ネットワークの寸断を想定し、災害対策用移動通信機器などをヘリコプターと陸路で運んで村役場などに設置し、村職員らが機器の利用を体験。翌日には十津川中体育館で中学生や村民が簡易無線機や発電機の取り扱いを学んだ(26日付)。

 

 同村は広大な面積に人口が点在していて、災害時の通信手段の確保は、村民の命にかかわる大きな課題であるだけに、事前の実習は非常に有意義といえよう。

 

 また、消防庁・県消防協会などが主催した奈良市での「地域防災力充実強化大会in奈良2022」には、地元や近隣消防団員・市民ら約1300人が参加し、実体験を報告する事例発表などに耳を傾けた。2011年の紀伊半島大水害の際に活動した五條市消防団の大垣祥造副団長が、被害状況の把握に役立ったラジオと衛星電話の備えを推奨。「明るいうちに素早く避難し、安全が確認されるまで自宅に戻らない」ことなどを訴えた(28日付)。

 

 当然のことながら災害は、市町村という個別の行政エリアを越えて発生するもの。市町村がまとめた“危険区域マップ”を頭に入れておくだけでなく、近隣の自治体の地形や施設なども確認しておく必要があろう。

 

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