道路状況の改善 いつかはやらねば - 編集委員 松岡 智
交通関連の動きが活発化している。電動キックボードの運用規定が明確になり、自転車の交通違反取り締まり強化が始まった。来年4月には、特定の条件下で運転を完全に自動化する自動運転「レベル4」の運行許可制度を盛り込んだ改正道路交通法と、自動配送ロボット運行の届け出制度の施行も予定される。交通情勢が変革期に入っているのは疑いがない。
一方で多種多様な形態、条件の車両が行き交う道路の改善では停滞気味の感がある。現状のままで、車道に低速車両用の走路区分を新設・拡大したり、走・通行に影響のある路面状況を見直したりなどしないなら、異なる車両の使用者間のあつれきは一層深まる。
自転車、ミニバイクの利用者と自動車のドライバーの関係でもそれはうかがえる。自転車使用者らは車道左端の路面状態、出せる速度の関係で不安や恐怖を感じ、ドライバー側はこれらの車両を安全に追い抜けない場合にストレスが増す。道路は当然、人や車いす使用者などが主体の場所でもある。さまざまな立場から不便、不満の声があるのは想像に難くない。
県も例外ではない。人の行き違いにさえ配慮が必要な歩道や波打ち、段差の激しい道にもしばしば出くわす。数々の県内自転車ルートでも、自動車が侵入できない専用道は一部にとどまっている。
技術的な革新が起こり、法規と運用の見直しが進む時期にハード面はそのままでいいのか。インフラ整備に大きな資金が必要なのは言うまでもない。ただそれを口実に対応策を考えることも放棄するなら、歩道はより混乱し、車道はより神経を使わざるを得なくなる。時期のずれはあるものの、県にも新しい波は必ずやって来る。
すべてを一斉になどとは、もちろん言わない。現況の道路行政のように調査によって優先順位を付け、可能な場所から行うのが当然だ。電柱の地中化のように新設、改修工事に合わせて計画を進める方法もある。その際には道路工事の専門家だけでなく、国内外先進地の現況を知る交通や都市デザイン関連などの専門家の視点もあれば、より利用者目線に沿ったものに近づけられる可能性は高い。
使える金が少ない時に理想論と一笑するのは簡単だ。だが一人一人が考えることが国や県、市町村の限られた予算の使い方に無駄がないかを監視することにもなろうし、未来を見据えたより安全で健康的な暮らしにもつながる。使いづらい道路の改善は、いつまでも放って置けるものではない。