金曜時評

コロナ下の大型連休 - 論説委員 増山 和樹

コロナ下の大型連休

強いメッセージを



 大阪や京都に3度目の緊急事態宣言が発令された25日、奈良新聞は県内の観光地で来訪者の声を集めた。近鉄、JR両奈良駅に近い三条通は普段通りにぎわい、京都市の男性は「ショッピングセンターが閉まったので、奈良に買い物に来た」と話した。

 緊急事態宣言が発令された4都府県では、酒類を提供する飲食店や百貨店などの大型商業施設、映画館などに休業要請が出され、多くの施設が休業に入った。水が低い所へ流れるように、人の流れが奈良に向かうのは当然だろう。

 コロナ禍が広がる今、県内から大阪への移動は身構えるが、大阪から県内への敷居は相当低い。このため奈良市は、緊急事態宣言の発令と同じ25日から、市内の飲食店に対する営業時間の短縮要請に踏み切った。28日には橿原、天理、大和郡山、生駒の4市も要請を決めた。

 4月に入り、県内では1日当たりの新規感染者が100人を超える日も珍しくない。29日も90人の新規感染者が確認され、病床の占有率は入院病床で73%、重症病床は81%に達している。死者も2人増えた。大型連休(GW)をはさんでさらに増加が続けば、県内の医療は危機にひんする。

 昨年、アウトドアレジャーを目的に他府県から行楽客が押し寄せ、大渋滞も起きた吉野郡では、GWに向け、各町村が自衛策を講じている。十津川村では観光名所の「谷瀬のつり橋」が通行止めとなり、道の駅も臨時休業に入った。同村では今月、初の感染者が出た。吉野町もバーベキュー客らが利用する吉野川河川敷の駐車場を27日に閉鎖した。

 県も27日の対策本部会議で4府県への緊急事態宣言発令を踏まえた「緊急対処措置」を策定。市町村との連携が前面に打ち出され、飲食店への時短要請や感染防止策を適正に実施している店舗の認証などに協力して取り組む。「奈良モデル」のコロナ版ともいえそうだが、県としての主体性は見えにくい。時短要請は市町村による要請が前提で、認証制度は独自に実施している市もある。

 県のホームページには、感染症専門医の助言として「感染リスクは『場所』ではなく『行動』で変わる」とある。それならば、県としてもっと強いメッセージが必要ではないか。

 現状が第4波であることは誰もが認めるところだろう。波は相当高く、乗り越えるにはこれまで以上の手立てが必要だ。座礁させてはならない。

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