金曜時評

子供たちのために - 編集委員 松岡 智

 中教審は今年1月、小中学校、高校の教育の在り方に関する答申をまとめた。小学5、6年生では、専門の教員が特定の科目を教える教科担任制を令和4年度をめどに本格導入することが示された。対象としてはより専門性が高く、つまづく児童が多い理科や算数、2年度から教科となった英語が挙げられている。

 全国的にみると、すでに教科担任制を導入している地域がある。それら先進地では、十分な専門的知識を有する教員による授業が、分かりやすさや、学ぶ意欲の向上などで一定の効果を上げているようだ。確かに教科のつぼをより的確に把握した上での授業は、児童の興味関心を高め、学ぶ楽しさをもたらし、後の高度な学習にも生きる指導を可能にしやすい。

 また、業務全般にわたり忙しくなっているとされる担任ら教員の負担が、一定軽減されることにも期待が持たれる。専門外の教科の研究、準備に必要とされた時間を、児童への細かな目配りなどに使うことができるようにもなる。

 県教育委員会などによれば、県内での教科担任制の本格研究、導入への環境整備はまだこれから。ただ答申の日程通り進めば、導入までの時間は1年ほどで、まずその間に人材の確保を進める必要がある。小中学校両方で教えられる教員免許の弾力化も答申で提案されたが、全国的な動きであることを考えても専門の教員の確保は容易でないことが予想される。

 また、そうした教員の身分保障の面も課題となりそうだ。より優秀な人材を得るには臨時でない方が望ましいが、相応の予算も必要。長期的視点でどう折り合いをつけるかの判断が求められる。

 教科担任制に限らず、新学習指導要領の実施期にあたり、小学校の現場では変化が多い。5、6年生で英語が教科となり、教科ではないもののプログラミング教育も必修化。新型コロナウイルスの影響でGIGAスクール構想の取り組みも前倒しになった。連続する大きな変化を教員、現場が十分消化しきれなければ、最終的には児童に影響が及ぶ。教育の効果はすぐには計れないと言われるが、一方で変化の定着には、現場と教育行政が一体となった短い間隔での実践、効果の検証と修正、改善も必要となる。

 それらの実践の際には、当たり前のようだが、変化に取り組む根本的な理由と意義をしっかり捉え直すことが不可欠。同時に、これからの社会を担う児童のためにとの視点も忘れてはならない。

 

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