金曜時評

許さぬ公人のうそ - 主筆 甘利 治夫

 自己保身としか思えない。

 前県議会議長の岩田国夫県議(70)=天理市勾田町、自民党奈良所属、5期目=の黒い交際問題で、本紙は同氏を刑法172条の虚偽告訴罪および同233条の信用棄損罪で、物的証拠を添えて奈良地検に告訴状を提出した。

 本紙が岩田氏の「黒い交際」報道をしたのは4月だった。本人に直接取材を求めて以降の行動をみると、まさに保身そのものだ。黒い交際疑惑がかけられたのなら、堂々と記者会見に応じて釈明すればよいのに、それを全くせずに本紙を告訴するという対応をした。

 報道する前に岩田氏は本紙記者の取材に何と答えたか。

 「暴力団関係者との付き合いはない。私の周りにそんな人はいない。これまでも付き合いは一切ない。知り合いもない」と、黒い交際の事実を全否定した。昨年7月の議長就任時に、奈良市内のホテルで山口組系暴力団元組長と会っていたことを聞くと「記憶にない」とも答えていた。

 ところが報道されるや、その行動は公人にあるまじきものだった。他の報道機関からも記者会見を求められたが、これに応じないだけでなく、議会内でも各派連絡会を招集して、集まった10人ほどの議員を前に、一方的に黒い交際を否定、「法的措置をとる」とするのみで、中身の説明はなかった。わずか10分だ。

 公人であるなら説明責任を果たすことは今や常識でもある。記者会見に応じることが、国民や県民の知る権利に応えることだからだ。自民党県連の幹部に、あるいは法律の専門家である代理人弁護士のなかに、適切なアドバイスをする人がいなかったことは残念だ。

 そして岩田氏のいう法的措置がどうだったか。

 訴状をみると、平成16年ごろに現役だった当時の組長と会食したこと、また同28年春ごろに、奈良市内のホテルでも面談したことが明らかにされた。「付き合いは一切ない」と取材に答え、県議会での説明もうそだった。黒い交際の事実を認めはしたものの、議長就任時に会ったこと「のみ」を否定している。そのようなうそをついて本紙を告訴したのは、時間稼ぎを行い、来春の県議選に立候補しようというものだろう。そのようなうその告訴をするという悪質な行為は、憲法が定める報道、言論の自由への挑戦でしかない。

 自己保身のために本紙を虚偽告訴した許しがたいものであるから、本紙は虚偽告訴罪と信用棄損罪で奈良地検に告訴状を提出した。

 新聞人は「無告の民の代弁者」だ。取材活動は県民になり替わって、権力を持つ人に対して続けている。すべての公人は、その言動に責任があることを忘れてはなるまい。

 

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