金曜時評

納得できる説明を - 編集委員 山下 栄二

 県教育委員会が8日発表した県立高校の統廃合を含む学校・学科の適正化実施計画案が波紋を広げている。奈良市の平城、西の京、登美ケ丘の3高校を2校にするほか、宇陀市の榛生昇陽高校と大宇陀高校、吉野町の吉野高校と大淀町の大淀高校をそれぞれ統合し、2校にする。奈良高校を平城高校の跡地に移転するなどだが、県民の間からは「拙速な削減計画であり、広く県民に説明すべきだ」と統廃合案に反発する声が上がっている。

 計画案によると、平城、西の京、登美ケ丘―の3校は「国際高校(仮称)」(場所は現在の登美ケ丘高)=平成32年度開校予定=と「県立大学付属高校(同)」(場所は現在の西の京高)=同33年度=の2校に再編。平城高校の跡地には、34年度から奈良高校が移転する。大淀高校と吉野高校は「奈良南高校(仮称)」、榛生昇陽高校と大宇陀高校は「宇陀高校(同)」となるが、各校の校舎は残すという。

 同計画に対して、いち早く行動したのが校舎がなくなり跡地に奈良高校が移転する案がある平城高校の同窓会。同校最寄りの近鉄高の原駅前で計画案に反対する署名活動を11日に行った。また、教員や市民らでつくる「県立高校の削減を考える会」は、県民的な合意を得ていない計画として、説明会やパブリックコメントを実施し県民への説明を求める声明を12日、発表した。

 多感な青春を過ごした母校に対しては、個人的な差はあるものの誰でも思い入れはあるものだ。いい例が高校野球での校歌斉唱で、関係者の愛校意識が高まる。その学校名や校舎が消えてしまうのは、関係者としてはショックが大きくて当たり前だ。少子化対策や経費面の合理性だけで割り切れない。そういう思いを無視して、単にパズルをはめこむような統廃合であってはならないのはいうまでもない。

 今回の計画の中で、最も多くの人が首をかしげるのは平城高校の跡地に、耐震工事化が困難だとして奈良高校が移転する案だろう。納得できないと平城高校同窓会などが猛反発するのは分かる。県立高校の削減を考える会も「高校再編における特色化とは異質」と疑問を投げかける。

 少子化や特色化などで高校再編が時代の要請であるのは理解できる。ただ、今のままでは県教委の説明不足は否めない。18日から県議会が開会するが、統廃合案に反対する県議の動きもあるという。まずは県議会での徹底した議論を見守りたい。

 

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