安倍元首相は失血死、銃弾2カ所に命中か
奈良市の近鉄大和西大寺駅前で参院選の街頭演説中に自民党の安倍晋三元首相が銃撃されて死亡した事件で、奈良県警は9日午前、司法解剖の結果、死因は右鎖骨下動脈の損傷による失血死と発表した。
県警によると、司法解剖は8日午後10時40分から9日午前5時10分まで行われた。銃弾による傷は首と左上腕部の計2カ所にあり、左上腕部から入った銃弾が致命傷となった。
逮捕された元海上自衛隊員、山上徹也容疑者(41)=奈良市大宮町3丁目=は犯行の動機について、「特定の団体に恨みがあり、安倍元首相がつながりがあると思い込んで犯行に及んだ」と供述。「私がしたことに間違いない」と容疑を認めている。
使用された銃は長さ約40センチ、高さ約20センチで、県警は「見た目から明らかに手製」と説明。現場では数個の金属片が見つかり、犯行に使われた銃との関連を詳しく調べる。
安倍氏が銃撃された際、現場の北側に停車していた参院選候補者の選挙カー上部の看板に、弾痕が数カ所残っていたことも分かった。
また8日に容疑者の自宅を家宅捜索し、手製とみられる銃数丁と長さ数十センチの筒数個、パソコンなどを押収した。実家の家宅捜索でも、書籍やノート数冊を押収、中身を詳しく調べている。
押収物に危険物が含まれる可能性があり、山上容疑者が住むマンションの住民ら約30人に避難を求め、8日午後10時半ごろ解除した。
県警は安倍氏の警護体制について「警護の人数などは今後の警備活動に差し障るため答えられない」としている。演説が行われることを把握したのは前日7日の夕方で、「突発的な警護だが、警備体制を取る時間はあった」という。
中西和弘刑事部長は「警備体制に問題があったか確認し、問題があれば適切に対応する」とし、「安倍元首相が演説中に銃で撃たれ、亡くなられたことを重大に受け止めている。全容解明に向け捜査していく」と述べた。奈良西署に刑事部長をトップとする90人態勢の捜査本部を設置したことも明らかにした。
山上容疑者は8日午前11時30分ごろ、近鉄大和西大寺駅前で演説中だった安倍氏を背後から銃撃、殺害しようとした疑いで現行犯逮捕された。安倍氏は同日午後5時過ぎ、搬送された県立医大付属病院で亡くなった。