みねい歯科医院、嶺井院長-コロナに立ち向かう(10)

奈良市恋の窪に密着した歯科診療を展開する「みねい歯科医院」(同2丁目)は、平日の休診日を往診日に変えて近くの高齢者福祉施設への往診を行っている。コロナ禍で施設の入所者と家族の面会が制限される中、会話が減るなどして入所者の口腔状態が悪化。持ち運びができる機器も導入して、院内外で診療に奔走する。
同医院は平成16年に開院。歯科治療をはじめ、「口腔がん検査のできる歯科医院」として、患者に寄り添った診療を行っている。
コロナ禍となり、県内に緊急事態宣言が発令された昨年4、5月には、外出自粛のため来院患者がコロナ禍前と比べ3割程度減少した。
嶺井弘行院長(49)は「(来院患者の減少による収入減により)スタッフの収入が下がらないように」と、昨年8月から木曜日の休診日を往診日に変えて、近くの高齢者福祉施設への往診を始めた。
同施設では、新型コロナの感染防止のため、入所者と家族の面会を制限。嶺井院長によると、入所者が会話をする機会が減ったり、来院できなくなったりして、口腔状態が悪化する入所者が増えていたという。
コロナ禍前も施設から要請があればその都度、往診していたが、定期的に行うために持ち運びができる治療機器やレントゲン装置を導入した。
施設への往診では、歯科治療のほか、口腔ケアや入れ歯の調整などを実施。口腔機能が低下すると誤嚥(ごえん)性肺炎などにつながるとして、舌の筋肉を鍛える体操も紹介している。
施設以外にも、寝たきりなどで来院できない高齢者宅への往診も行っている。
往診では10人以上診療する日もあるといい、嶺井院長は「(コロナ禍での来院患者の減少による)減収分を補完するとともに、超高齢化社会のニーズにも対応していければ」と話す。
院内では消毒など感染対策を徹底。マスクをしたままレントゲンが撮れる装置なども近く導入する予定で、「飛沫(ひまつ)防止につながる」という。
「(歯の治療では多いとされる)再治療の必要がない丁寧な治療を心掛けている」と嶺井院長。地域に根差し、患者に頼られる歯科医院を目指す。