筒井康隆さんが、もう小説は書かないと宣…
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筒井康隆さんが、もう小説は書かないと宣言。それで「最後の作品集」になるらしい掌編小説集『カーテンコール』(新潮社)が話題だ。
振り返れば、筒井さんの作品を読んだのは1970年前後の短い期間。よく知られている『時をかける少女』など、独特のSF小説世界に魅了された。
奈良に住んでいるせいか、小説『筒井順慶』は記憶に残る。戦国武将として、松永久秀の宿命のライバルだった、あの筒井順慶を巡る筒井ワールドは荒唐無稽そのもの。
小説は1968年に週刊誌に連載、翌年書籍化された。順慶本人も登場して「今は日本にとっていい時代」「戦争はないし、ぜいたくな、苦労のない時代」などと語る。
また、日本は外国の戦争を眺め「片方では同情し、戦争をやめさせろと叫び、他方では武器を作って儲けている」とも指摘する。パロディーだけど批評精神が光る。
実際の順慶は大和の名門の出で、興福寺の衆徒であり続けた。「本能寺の変」「山崎の合戦」の近くにいながら直接関わっていないため「日和見順慶」と言われもしたが、実像に迫らない。享年36歳。(北)