「ロシアを悪者にすることは簡単」―。東…
「ロシアを悪者にすることは簡単」―。東京大学入学式での奈良市出身の映画監督、河瀬直美さんの祝辞が、ウクライナに軍事侵攻するロシアの擁護だとインターネットの一部で批判されている。
しかし、東大ホームページに公開された祝辞の全文を読む限り、河瀬さんはロシアを擁護していない。また、ロシアとウクライナが「どっちもどっち」だと言いたいわけではない。
たしかにロシアの蛮行は許されず、怒りを覚える。が、戦場ではロシア兵も命を落とし、彼らなりの「正義」もある。
立場が変われば正義と悪も変わる。二つの正義と悪がぶつかる中で、片方だけを悪と決め付けて思考を止めることは危険なことではないか。
大学は自由な学びの場だ。その中でさまざまな角度で物事を見て自分の考えを培って欲しいと、河瀬さんは未来の若者たちに言いたかったのだろう。
ある東大の学者が「侵略戦争を悪と言えない大学なんて必要ない」と河瀬さんの祝辞を批判したという。その言葉を借りれば、「一方的な考えを押し付ける大学なんて必要ない」と言える。(法)