【写スポーツ】人馬一体美しく 信頼関係を築く日々の触れ合い - 馬術競技 シュタールジーク代表・中村公子さん
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人馬一体となり、技を競う馬術競技。選手と馬の「心」と「力」が一致しなければ、最高のパフォーマンスは生まれない。それが馬術の難しさであり魅力だ。オリンピックでは男女が同じステージで戦う唯一の種目。馬との信頼関係をいかに築くかが勝敗の分け目となる。
経験を重ねることで感覚が磨かれ、より緻密な扶助(馬への合図)が出せるようになるともいわれ、幅広い年齢層の選手が活躍している。奈良市の中村公子さん(シュタールジーク代表)もその1人で1962年3月生まれ。昨年鹿児島で開催された国民体育大会(国体)で5大会連続優勝を果たすなど、県勢をけん引している。
競技は演技の正確さや美しさを競う「馬場馬術」、コース上に設置された障害物を飛び越えながらミスなく早く走行する「障害馬術」、馬場と障害、さらに自然に近い形の障害を設置したコースを走破するクロスカントリーを加えた「総合馬術」などがある。
中村さんは小学生の頃、当時住んでいた神奈川県鎌倉市にある乗馬クラブを訪れたことがきっかけで馬術を知り、馬との触れ合いが安らぎに。日本大学に進学後、本格的に競技を始めた。卒業後は乗馬インストラクターとして働きつつ、国体や全日本選手権に出場。美しい騎乗姿勢は世界水準と評価され続けている。
2008年に独立し、奈良市内に馬場馬術専門の乗馬クラブ「シュタールジーク」を設立。自分の理想を形にしたといい、マンツーマンで指導している。。14年、初の国際大会(韓国・仁川アジア大会)でメダルを獲得した。フィギュアスケートに例えられる馬場馬術を得意とし、国内外で輝かしい戦績を築く。「奈良で国民スポーツ大会(旧国体。今年から名称変更)が開催される31年までは現役を続けたい」と話す。将来を見据え、ジュニア世代の指導にも力を入れる。(写真・文 牡丹賢治)
【馬場馬術】
20メートル×60メートルのアリーナで、演技の正確さや美しさを競う。「常歩(なみあし)」「速歩(はやあし)」「駈歩(かけあし)」という3種類の歩き方を基本に、さまざまなステップを踏んだり図形を描いたりする。演技内容がすべて決められている規定演技と、決められた運動を取り入れた演技で構成し、音楽に合わせて行う自由演技がある。選手は馬に合図を送り、馬がそれに応えて雄大かつ華麗な動きを披露する。まさに人馬一体の演技が真髄。馬とのコミュニケーションが大切で、毎日のトレーニングで信頼関係を築く。
「シュタールジーク」では会員を募集している。詳しくは、電話0743(84)0004。営業時間は午前9時から午後5時。水曜定休(祝日の場合は翌日)。
※写真はいずれも奈良市都祁白石町のシュタールジークで写す。
馬の繊細な動きやダイナミックな動き、特に馬場馬術は技の質や正確さを競う採点競技。選手は競技中、手足を使ったり体重のかけ方を変え、体全体で指示を出す。馬によって性格が違い、見極めも大事だ。トレーニング以外でも、シュタールジーク所有馬や会員から預かる馬、県有馬合わせて17頭の世話に明け暮れる中村さんらスタッフ
2002年5月生まれのメープルII。22年に現役を引退、余生をのんびり過ごす。全日本内国産馬選手権を制覇、全日本馬場馬術選手権でも上位に入るなど外国馬に引けを取らない成績を収めたサラブレッド。優秀馬の証しの記念章が並ぶ=写真。メープルIIの一人娘、18年生まれのメニーナは「今後の成長に大きな期待がかかる1頭」と目を輝かせる中村さん
自らの理想を形にした馬場馬術専門の乗馬クラブ「シュタールジーク」、ドイツ語で勝利の厩舎(きゅうしゃ)。基本を大切に個々のレベルに応じ、ベテランスタッフがマンツーマンで指導する。「馬は疲れた心を癒やし、明日に向かう元気を与えてくれる」という
2024年4月24日付・奈良新聞に掲載