南銀グループ会社と泉屋「肉に合う」日本酒開発 「花巴KASAMA 純米大吟醸」美吉野醸造が製造
南都銀行のグループ会社、奈良みらいデザイン(奈良市、畠中幸治社長)と酒類卸売業者の泉屋(同、今西栄策社長)は、「肉に合う」日本酒「花巴(はなともえ)KASAMA 純米大吟醸」を開発し、販売を始めた。すき焼きをはじめ、さまざまな肉料理に合った飲み応えと酸味が特徴。酒米の栽培から醸造、販売まで6次産業の形で誕生した日本酒が、料理人らを魅了し始めた。
奈良みらいデザインは農業の成長産業化、地域活性化を目指して2021年4月に設立。宇陀市榛原笠間地区に地元農家から耕作地を借り、中山間地で持続可能な農業の確立に取り組んでいる。
うるち米以外に酒米を選んだのは、宇陀地域では酒米づくりが盛んだったと地元住民に聞いたことがきっかけ。土と水が良く、酒米の栽培に適しているという。昨年春から50アールほどの水田で酒造好適米「吟のさと」の栽培を始めた。
昨秋収穫した酒米は約3・45トン。予想以上の収穫量で、当初は県内酒造メーカーに提供するつもりだったが、6次産業化を目指して再検討。独自の日本酒ブランドを確立し、販売する方向へかじを切った。
商品化では、日本酒の取り扱いの専門家である泉屋に共同開発や販売戦略、プロモーションなどを相談。独自性を際立たせるため、「肉に合う日本酒」を特色として打ち出すことを決めた。
この観点から、酸味を引き立てる独創的な酒造りで知られる美吉野醸造(吉野町)に依頼。熟成期間を長めにした純米大吟醸は、うま味に加え、ほのかな酸味が感じられる酒に仕上がった。
美吉野醸造の代表銘柄と酒米を栽培した地区名から「花巴KASAMA」と命名。昨年立ち上げた商品化プロジェクトチームにデザイナーも加わり、容器など見た目にもこだわった。
商品の完成を受け、関係者がミシュランガイドに掲載された肉料理店や、日本酒の銘柄にこだわる飲食店などに直接セールス。「ストーリー性があって面白い」「こだわりの味に仕上がっている」と高評価を受け、取扱店は徐々に増えているという。
関係者は今後、県産の農畜産物の価値向上につながる酒米の栽培を続ける一方、新戦略も検討。狙いを変えた県内各地の酒蔵との酒造り、海外展開も視野に入れる。
奈良みらいデザインの担当者は「肉に合う食中酒として、より多くの人に飲んでほしい。販売ルートをさらに広げたい」と意気込む。泉屋の今西社長は「『肉にはKASAMA』をアピールし、おいしい飲み方の提案、ギフト利用の推奨にも積極的に取り組みたい」と話す。
価格は720ミリリットル入り3千円(税別)で、約3千本を販売。酒類販売店やECサイトなどで取り扱っている。問い合わせは泉屋、電話0742(26)1234。