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【動画あり】糞虫に魅せられて episode2 糞虫を科学する女子高生

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「糞虫」 鞘翅目(しょうしもく)コガネムシ科の昆虫のうち、哺乳類の糞を食物とするグループの総称。(出典:ブリタニカ国際大百科事典)

「糞虫」鞘翅目(しょうしもく)コガネムシ科の昆虫のうち、哺乳類の糞を食物とするグループの総称。

(出典:ブリタニカ国際大百科事典)

 

 

瑠璃色の謎

 糞(ふん)虫の中でもオオセンチコガネは、美しい色彩で知られている。その色は「構造色」と呼ばれ、物質自体に色があるわけではなく、光の反射によって特定の色が生じ、身近にはコンパクトディスクやシャボン玉などが挙げられる。オオセンチコガネの構造色は地域によって異なり、奈良公園では瑠璃色に輝くルリセンチコガネとして知られているが、三重では緑色、京都や滋賀では赤みがかった緑色が多く見られる。

 

 色の違いは、なぜ生じるのか。この問いが二人の女子高生の研究の出発点となった。

 

奈良公園で多く見られるのは左端の個体(画像提供:奈良高校)

 

 

大学院生との共同研究 

 奈良県立奈良高校の3年生、松山蓮奈さん(18)と福島澪月さん(17)はスーパーサイエンスハイスクール(SSH)コースに所属し、京都大学理学部の女子高校生向け理学探究活動推進事業(COCOUS-R2023)に申請して採択された。約1年半の間、大学院生のサポートを受けながら瑠璃色の謎について研究を進めた。先行研究では、オオセンチコガネの前翅(まえばね)は、いくつもの層から形成されており、その層の厚さの違いが、色の違いを生むことがわかっていた。

 

 彼女たちはさらに踏み込み、この多層構造の形成に関与する元素を特定することに成功した。二人が特定した元素は、酸素、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、カリウムの5種類。これら5つの元素がオオセンチコガネの前翅の形成時に何らかの作用を与えて、地域による色の差異を生じさせているのではないかと考えた。

 

 大学院生との共同研究を通して、彼女たちは研究に対するアプローチや考え方について、多くの学びを得たと言う。指導をしてきた西原絵里教諭は「当初、高校生と物理専攻の大学院生とではレベルの違いを感じたが、その人たちと研究を進めたことで、探究に必要な力を得ることができた。」と彼女たちの成長に驚きを隠せない。

 

県立奈良高校3年生、松山蓮奈さん(18)写真右 と福島澪月さん(17)写真左

 

 

国際学会での発表

 8月22日、二人はこの研究成果を奈良市で開催された第1回アジア土壌動物学会で発表した。国際学会という大舞台で、彼女たちは英語でプレゼンテーションを行なった。受験勉強に集中したい高校3年生の夏。彼女たちは国際学会の発表準備に追われる日々を過ごした。研究成果をまとめるだけでも大変だった上に、英語でのプレゼンテーションは相当なハードルだったに違いない。

 

 「ALT(外国語指導助手)や英語の先生に発音や文法を細かく指導していただき、最後は大きな声ではっきりと話すことを心がけた」と二人は振り返る。

 

第1回アジア土壌動物学会

8月22日 第1回アジア土壌動物学会で研究成果を発表する2人(映像提供:奈良高校)

 

 

未来を照らす瑠璃色の輝き

 今回の研究を経て、二人はそれぞれの未来に向かって歩み出す。松山さんは「私は、臨床医として患者さんを救いつつ、基礎研究にも関わりたい」と語り、福島さんは「獣医として、畜産などの大動物を助ける仕事に就きたい」と自身の夢を語った。そんな彼女たちに西原教諭は「おもしろいことを見つけて、とことん追究していってもらいたい」と熱いエールを送る。

 

 糞虫という小さな虫に光を当てた彼女たちの研究は、学術的な発見へとつながり、高校生の枠を超えた成果を残した。その努力は、構造色のように決して色あせることのない、瑠璃色のアオハルとしていつまでも輝き続け、彼女たちの道を照らしてくれるに違いない。そして、残りわずかな高校生活、最後のひとフンばりを!

 

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