鉄道文化を後世に 保存SLが「王寺町指定文化財」に - 2026年「町制」100周年へ活用
現役時代(1972年)、貨物列車を牽引し、王寺駅に入線中のD51形895号機=147 s47-3-8 王寺駅2 D51貨 天白氏の写真。撮影:天白逸郎氏(奈良県立図書情報館今昔写真WEB蔵)
現役時代(1972年)、関西本線の鹿背山トンネル(木津川市)を抜けるD51形895号機=1972-7-24 14・20鹿背山(2)
の写真。撮影:木村守男氏(奈良県立図書情報館今昔写真WEB蔵)
奈良県王寺町はこのほど、同町舟戸の舟戸児童公園内に静態保存しているSL「D51形蒸気機関車895号機」、および同町地域交流センター(同町久度2丁目のリーベル王寺東館5階)に展示中の赤いナンバープレート4点を、町の指定文化財(歴史資料)に指定した。県内で保存されているSLが文化財指定されるのは、今回が初めて。
同町は明治23(1890)年の王寺駅開業を契機に、「鉄道のまち」として発展してきた歴史があり、SLという明治時代以来の鉄道文化を末永く伝えるために、今回の指定が行われた。同町は、2026年2月11日の町制100周年を見すえて、さらなる保存・活用を図るという。
同町観光協会が発行(24年3月)した「王寺いろは手帖」にも詳しく紹介されている(JR王寺駅や公共施設などで無料配布)。
なお、D51形SLが市町村で指定文化財になっている事例は、鳥取県米子市、北海道安平町にある。(K)
【D51形機関車とは】
「D」は動輪の軸が4本あるという意味。「C」は3本。D51形は大型貨物用機関車として1936(昭和11)年に開発、約10年間に各形式の中で最も多い1115両が製造された。
比較的きれいな状態で保存されている機関室の内部=24年5月
舟戸児童公園内に静態保存されているD51形895号機。柵の左側がJR関西線・和歌山線=24年4月
国道168号の高架橋の東側から望む舟戸児童公園。左側は近鉄田原本線=24年4月
【D51 895号機とは】
同機は、1944(昭和19)年5月10日に、日立製作所で製造。柳井・岩国(山口県)、広島第2、津和野(島根県)、鳥取、福知山(京都府)の各機関区を転属し、71(同46)年4月5日から72(同47)年11月7日に引退するまで奈良運転所に配属。関西本線や草津線を走り、運転距離は163万3969キロに及ぶ。
同機には、集煙装置と重油併燃装置が良好に残っている。集煙装置は、トンネル内で煙が運転席に入り込まないよう後方に排出させるもの。これにより、機関士・機関助士が一酸化炭素中毒になるのを防ぐ。
また、重油併燃装置は、走力を高めるのに火室内に重油を噴射し、効率よく燃焼させて蒸気圧を安定して上げるもの。
リーベル王寺東館5階に展示中のナンバープレート4点=24年5月
【展示SL】
いつでも自由に入れる。運転席に座ることも可能で、子どもたちだけでなく、大人にも人気がある。同公園のすぐ両脇をJR関西線・和歌山線や近鉄田原本線の電車が走っていて、雰囲気は抜群。春には桜が咲き、写真愛好家も訪れる。夕方以降は、ライトアップされる。
春は桜とのコラボが美しいSL・D51形895号機=24年4月
D51形895号機の正面風景=24年5月
【保存SLへの行き方】
JR関西線(大和路線)王寺駅北口から東へ、近鉄田原本線沿いに歩き、国道168号の高架橋の東側の歩道に上がり、南へ折れて少し行くと、左へ降りる階段がある。徒歩約6分。
D51形895号機の後方風景=24年5月
D51形895号機の説明版=24年5月
動画撮影