遊び心全開! 鹿のふんからひらめいた癒やしグッズ、吉野の「杉玉」手がける「南都木材産業」
吉野産のスギを使ったアロマグッズが話題を呼んでいる。見た目が「鹿のふん」に似ていることから、「鹿のふん杉玉」と名付けて今春からインターネットを通じて販売したところ、密かなヒット商品に。「奈良の名物」にちなんだ名前のインパクトを利用して、木材店のPRと吉野銘木のブランド向上につなげたいと関係者は意気込んでいる。
商品を手掛けているのは、住宅用木材を製造販売する「南都木材産業」(吉野町飯貝、福田富夫代表)。「木材屋の本気シリーズ・吉野スギ編」の最初の商品として、同社ホームページで販売を始めた。開発と広報を務める福田尚弘さん(38)に話を聞いた。
吉野スギの端材を有効活用、奈良を連想させる商品に
木目が美しく、香りに癒やされるとの声が多い「鹿のふん杉玉」=南都木材産業提供
同商品は玉状に磨いた天然木を鹿のふんに見立てたアロマグッズで、吉野ヒノキと並ぶ奈良の木のブランド木材である吉野スギの端材を有効活用。商品は手作りキットとなっており、購入者自身がキット内の杉の薄板で舟(器)を作り、そこに杉玉を入れて完成する。
使い道のない吉野スギの端材を有効活用している=同
奇抜なネーミングが注目を集める一方で、アロマグッズとしての商品力は高く、爽やかなスギの香りはリラックス効果も。またスギの木には湿度を調整できる特性があり、杉玉に好みのアロマオイルを数滴垂らせば、ゆっくり穏やかに香りが広がるアロマディフューザーになる。
開発の最初のきっかけは、同社の駐車場に転がっていた野生の鹿のふんに目を留めたこと。インスピレーションが湧き試作に取り掛かった。杉玉が出来上がった瞬間、「コロコロとした形、吉野スギの濃い茶色、まさに鹿のふん」と感じた福田さん。見た目の印象と、奈良といえば奈良公園の鹿ということから、商品名は「鹿のふん杉玉」に決定。
商品説明の表現にも遊び心を感じる=同
商品開発にあたっては、実際に奈良公園の鹿のお尻を追いかけ、どのようにふんをするのか熱心に観察・撮影。鹿がしっぽをクイっとあげて、「ばばばばっばばっばばばっ!!!!!」っと、すごい勢いでふんをする様子に衝撃を受け、その瞬間をとらえた写真をもとにイラストをおこし、パッケージに採用した。
イラストのポーズや表情はこちらの鹿さんをモデルに=同
大ヒットとなった「吉野ひのきマスク」などの技術を継承
同商品の開発には、近年話題を呼んだ同社の「吉野ひのきマスク」や「吉野ひのき玉たまご」などの吉野ヒノキ加工商品からも着想を得た。同マスクは、当時の農林水産大臣が記者会見で着用して話題となり数多くのメディアで取り上げられてきた。現在はノーマスク化の流れで同マスクが役目を終えつつある中、それに次ぐ商品として生まれたのが「鹿のふん杉玉」だ。
杉玉を研磨加工する様子。削りすぎるとあっという間に米粒大になってしまう=同
杉玉を入れる舟(器)は、薄板をマスクの形に形成する技術を生かした。同マスクが出来た当初は、たこ焼きの舟マスクと言われることが多かったことをヒントに。また杉玉は、ひのき玉を作る技術を応用して製造。スギはヒノキに比べると柔らかいため、削りすぎないよう研磨時間を見極め微調整した。一見関連がなさそうな両商品だが、コロナ禍で培ったヒノキの商品力をしっかりと受け継いでいる。
「手に取った方が『作る楽しさ』を味わえるのもこの商品の魅力。YouTubeの1分解説動画を見ながら簡単に作れるので試してみてほしい」と福田さんは話す。
同社YouTube動画を観るとスムーズに舟(器)が作れる=同
かんなくずや、端材のブロックも魅力的な素材。作る楽しみを発信
スギやヒノキのカンナくずも密かに需要が高いものの一つ。同社で製造する和室造作用部材を美しく仕上げる過程で出るのが、厚さ0.1ミリに薄くスライスされた繊細な端材。クラフト素材として見出したのは吉野在住の地元の方で、同社のカンナくずで花のモチーフ「カンナフルール」を作ったのが始まり。その光沢と、柔らかくしなやかな質感で折り曲げも容易なことから、今ではハンドメイドクラフトの素材として全国各地から需要があるという。
依頼があれば木を使ったワークショップも開催。同社の木製ブロック「キュブつく」で動物を作るワークショップは、子どもにも大人にも評判だ。福田さん自身にも幼い子どもがいる。「作り上げた時の嬉しそうな笑顔は最高。遊ぶ子どもたちにとっては、奈良の木かどうかはどうでもいいこと。ただただ楽しい体験・思い出を作ってほしい。大切なのは純粋な子ども心と常に楽しむ遊び心だと、こちらが気づかされた」と目を細める。
木材ブロックの「キュブつく」。大人には無塗装の奈良の木でつくる「奈良鹿」が人気=同
声掛けがあれば、イベント出店にも前向きだという=同
吉野スギシリーズは進行中! 消費者に寄り添い親しみやすい木材屋を目指して
現在、吉野スギの第2弾、第3弾のシリーズ商品も開発進行中だ。「個人の消費者にとって木材屋はおそらく近寄りがたいイメージ。小さい会社だからこそスピーディに、ワクワクする物やサービスを発信していきたい。商品を通して、奈良にちょっと『おもろい』木材屋があると親しみを感じてもらえたらうれしい。それが吉野の林業・木材業全体の盛り上がりに繋がれば」と締めくくった。
同社の商品は同社ECサイトのほか、吉野の本社工場、奈良県内の「道の駅」でも購入できる。「鹿のふん杉玉」は同社ECサイト限定で取り扱う(1760円・税込み)。問い合わせは同社、電話0746-32-8409。
1972年創業の住宅用和室造作材製造販売メーカー。ECモール nantomokuzai楽天市場店・auPAYモール店では、木材オーダーカット・DIY・ハンドメイド材料、また吉野ひのきマスク・吉野ひのき玉たまご等のオリジナル商品を多数展開。
「鹿のふん杉玉」(南都木材産業提供)
吉野スギ100%のアロマディフューザー「鹿のふん杉玉」を、抽選で5人にプレゼント。
(1) 奈良新聞のinstagramアカウント「奈良新聞の鹿好きさん」(@np_shikazuki)をフォローの上、
(2)「鹿のふん杉玉希望」のDM送付 で応募完了。
7月9日締め切り。抽選ののち、当選者のみにDMで連絡。非公開アカウントは抽選対象外。
企業情報
※記事公開時の情報です
<社名>
南都木材産業(なんともくざいさんぎょう)
<住所>
奈良県吉野郡吉野町飯貝1337
<営業時間>
8:00-17:00
<電話>
<公式SNS>