どの世代にも「懐かしい」素朴なおいしさ。丁寧に焼き続ける「畠山製菓」
桜の名所、佐保川のほど近くに店を構える「畠山製菓」(奈良市法蓮町)は、店主が一枚ずつ手焼きするせんべいとベビーカステラが看板商品。近くの市立佐保小学校の子どもたちと交流を続け、商品開発にも挑戦しながら、今も素朴な味を伝えている。
看板にも「昔ながらの味」を掲げる畠山製菓=奈良市法蓮町の畠山製菓
店頭には豆入りや焼印入りなど、様々な手焼きせんべいが並ぶ=同
同店は今年で創業90年と伝わり、現店主の畠山幸仁さん(54)は3代目。近くの船橋通りで60年余り、後に現在の場所に移りせんべいを作り続けてきた。シンプルな素材を使い一枚ずつ手焼きするスタイルは創業以来、変わらない。
昔ながらの手焼きせんべい、ベビーカステラに加えて、新たな商品開発にも取り組む。昨年発売した「鹿さんぽ」(18枚入り・1080円、以下すべて税込み)は豆を使った手焼きせんべい。ピーナッツ、空豆、黒豆の3種があり、華やかなパッケージが目をひく。
春の門出やお祝いにぴったりの「めで鯛せんべい」(6枚入り・220円)、WBC優勝の余韻を楽しむ「野球カステラ」(200g入り・570円)などユニークな品も店頭に並び、一年ほど前からはSNSを使ったPRにも力を入れている。
野球カステラの焼き型は祖父の代から受け継いできた一点もの=同
地域の子どもたちの成長を見守ってきた90年
同店は佐保小学校の向かい。畠山さん自身も卒業生で、店を開きながら児童らの見守り役を担ってきた。同小のしごと見学の受け入れや、下校時の児童らと挨拶をかわすのはもちろんのこと、同小の女の子の仲良しグループに誘われて卒業まで交換日記を続けたこともある。
児童たちが大人になってからも細く長く交流は続き、卒業生が大人になって自分の子どもと一緒に顔を出してくれたり、年老いた親が幼少から愛した味をもう一度食べさせてあげたい、と買い求めに来てくれたりと、思い出に残るエピソードは数えきれない。
思い出を話す3代目店主の畠山さん=同
縁がつながり完成した「鹿さんぽ」
「『鹿さんぽ』も、小さい頃から店に通ってくれていた子がプロとして関わってくれた。こんな繋がりが心から嬉しい」と畠山さんは目を細める。
同商品のロゴマークや焼印の鹿の絵は、奈良市在住で「スタジオ イヅ」代表のイラストレーター、西村友宏さんによるもの。これをもとに、西村さんと親交のある奈良のデザイン事務所「サトリデザイン」の羽角聡子さんがロゴと3種のパッケージをデザインし、1年かけて完成に至った。
ロゴマークや焼印に取り入れた鹿のイラスト=同
畠山さんのイチオシは空豆だが「ピンクと黄色のパッケージが良く売れるかな」と笑う=同
「鹿さんぽ」は同店のほか、道の駅「レスティ唐古・鍵」(奈良県田原本町)でも購入可能。奈良で老若男女に愛されてきた優しい味わいと鹿の焼印、おしゃれな包装で、県外の方へのお土産にと求める顧客も増えてきた。
出店やコラボは手の足りる限り積極的に
また、県内企業や学校、イベント関連の焼印を託され、式典などのせんべい製造も数多く引き受けている。春秋や年末年始など需要が重なる時期には一日10時間以上、ほぼ休みなく店頭での焼きに従事する。
夏場は灼熱という、一丁焼きの焼き場=同
畠山さんは「手焼きで一日に焼ける枚数は、機械と比べると8分の1ほど。ひとりの作業で限界もあるが、時間の許す限りは地域の需要にこたえていきたい。力になれそうな企画やアイデアがあれば、ぜひ声を掛けてもらえれば」と話している。
畠山製菓「鹿さんぽ」を抽選で3人にプレゼント。
(1) 奈良新聞のinstagramアカウント「奈良新聞の鹿好きさん」(@np_shikazuki)をフォローの上、
(2)「鹿さんぽ希望」のDM送付 で応募完了。
4月9日締め切り。抽選ののち、当選者のみにDMで連絡。非公開アカウントは抽選対象外。せんべいの種類は選択不可
企業情報
※記事公開時の情報です
<社名>
畠山製菓(はたけやませいか)
<住所>
奈良市法蓮町973-6
<営業時間>
7:00-19:00
<定休日>
第一、第三日曜日
<駐車場有無>
有
<電話>
<公式instagram>