この春から働く新社会人に食べてほしい、奈良にある旭川ラーメンのお店「梅光軒」 - 奈良ラーメン探検隊がゆく
奈良にある旭川ラーメンのお店「梅光軒」
今回は奈良市大宮町にある「梅光軒(ばいこうけん)」さんへお邪魔しました。奈良市役所に最も近いラーメン屋さんで、今年で23年目を迎えます。奈良では珍しい、北海道の旭川ラーメンを味わえるお店です。
今回の食レポは、隊長Nの人生で3度目の取材でした。
気さくで明るい店主の柳精一さんと梅光軒のラーメンをいただきながら、ラーメンへのこだわりやお店の歴史など、様々なお話をうかがってきました。
常連さんに愛されるお店
3月下旬、平日のお昼にお邪魔しました。
正午からのランチタイムは迷惑だろうと思い、それより少し早めの、午前11時20分から店前でスタンバイ。時間をずらしたつもりでしたが営業開始時刻の11時30分が近づくと、あちこちからお客さんが集まってきました。歩きの方も車で来られる方も、慣れた様子でお店に向かいます。
暖簾がかけられて営業スタート。11時40分になるともう、外でお客さんが並んで待つほどでした。
梅光軒のお客さんはリピーター(常連さん)がほとんど。だからといって、新参者が入りにくいお店ではありません。店主もスタッフの方も明るく元気で、むしろ誰でも入りやすい雰囲気です。
お店の前で並んで待つ場合はメニューが渡され、先に注文を聞かれます。
店内は、明るく気さくなご主人とスタッフの方の掛け声が響き渡ります。BGMで聞こえてくるのはテレビの高校野球中継の音。どこか懐かしい雰囲気です。
お店のすぐ傍に佐保川が流れていて、春は川沿いに桜が咲き誇ります。取材当日はまだ蕾でしたが、すでに桜を見にきている方もいました。
(今年の佐保川の桜の様子は、こちらの記事)
メニューは開店当時から変わらずこのまま
こちらが23年前の開店当時から変わらない、梅光軒のメニューです。
・しょうゆらーめん 800円
・しょうゆ野菜 950円
・しょうゆチャーシュー 1050円
・みそらーめん 800円
・みそ野菜 950円
・みそチャーシュー 1050円
・しおらーめん 800円
・しお野菜 950円
・しおチャーシュー 1050円
お店の人気メニューは、塩ラーメンと味噌ラーメン。
それから、野菜ラーメンもキャベツともやしがたっぷりで人気です。大盛りは2玉になり、女性や子どもに嬉しい小盛り(1玉の半分)も注文できます。
こちらの梅光軒は、北海道旭川市にある有名なラーメン店「梅光軒」の暖簾分けされたお店で、開店当時から今まで、旭川ラーメンの味を受け継いでいます。北海道では「札幌ラーメンが味噌、函館ラーメンが塩、旭川ラーメンは醤油」といわれていて、旭川ラーメンといえば醤油ラーメンが一般的です。
梅光軒に20年以上勤めるスタッフの方におすすめを尋ねると「醤油ラーメン!」と答えていただいたので、この日は、醤油ラーメンをいただくことに。
梅光軒の醤油ラーメンとご対面、実食
こちらが梅光軒の醤油ラーメン 800円です。
上に乗る具材は、歯ごたえのある大きなメンマと分厚くカットされた肉厚のあるチャーシュー2枚とネギ。チャーシューは豚のモモ肉を使っています。
麺は自家製の中細太のちぢれ麺で、加水率30%以下の低加水麺です。
スープのダシは、豚骨、鶏ガラ、野菜(玉ねぎ)、煮干し、昆布の5種類の食材で作られています。
そもそも「旭川ラーメン」とは、北海道の旭川市のご当地ラーメンの名称で、スープは魚介と豚骨や鶏ガラ等の出汁を掛け合わせたダブル出汁を使い、麺は低加水の中細太ちぢれ麺を使うのが特徴的なラーメンです。
加えて、スープにラード(豚脂)をたっぷり入れる特徴もあります。ラードをたっぷり入れるのには、ラーメンの温かさを保つ意味があるそうです。
梅光軒で使うラードについて尋ねると、「本家よりラードの量は抑えている」とのこと。本場の旭川ラーメンほどのラードを入れてしまうと、脂っこくなりすぎて関西ではあまり好まれないのだとか。
毎日8時間かけて作るスープと、毎朝お店の奥で作られる麺
丼ぶりを持つとずっしりとした重みを感じ、お箸を入れてみると他店と比べて麺の量が多いことに気づきました。
一口目はスープを。醤油スープは濃すぎず薄すぎない程よい味で、シンプルで美味しいです。ダシは、5種類の食材を使っているのにそれぞれの風味がケンカすることがなくバランスが良く作られています。
次に麺をいただきます。ちぢれ麺に醤油スープが絡まって味があってどんどんお箸が進みます。
麺の水分量が低い低加水麺なので、もそもそっとした小麦粉の食感が「これぞまさにラーメン」といった感じです。
スープは火加減が命
スープは毎日朝から8時間煮込んで一晩寝かせて、翌日分のスープとして出されます。
「スープは火加減が命」と店主の柳さんはいいます。梅光軒のスープを実現するためには、ただただ炊き続けてダシをとるのではなく、火加減の調整がもっとも重要なのです。
そこには熟練した技と、修行で身につけた経験が活かされています。
店主とお店のこれまで
店主の柳さんが「梅光軒」をオープンさせたのは29歳の時。今年で23年目を迎えるお店ですが、開店当時からお店の場所は変わっていません。奈良市大宮町の場所を選んだ理由について尋ねると、「不動産屋さんの紹介で、一件目がこの場所だったから」と、何とも気さくな柳さんらしい回答が返ってきました。
もともと生駒市出身の柳さんは、21歳の時、ラーメン作りを学ぶため、北海道の旭川市まで行って当時から有名だった「梅光軒」で修行を積まれます。
それまではマグロを取り扱う水産会社で働いたり、ケーキやパンを作るお仕事をしていたそうです。ラーメン屋をやろうと思ったきっかけは「ラーメンを食べるのが好きだから」というシンプルな理由でした。
旭川市の梅光軒本店で3年、そして同じく梅光軒の名古屋店で4年、計7年の修行を積んで、暖簾分けしたお店を奈良市大宮町で開きました。今ではもう、暖簾分けのお店を出していない梅光軒ですが、柳さんのお店を含めて7店舗の暖簾分けしたお店が、全国に点在しています。
7年間の修行の中で、特に名古屋店での経験は、奈良に戻って独立する将来を見据えていた柳さんにとって、大きな経験となりました。
旭川市にある本店では「食材や麺の調達に困っても電話一本で解決できるが、名古屋店となると(遠いので)そうはいかない」。名古屋店に移ってから、今も続く麺作りや仕入れの方法などを学びました。
昔から変わらない麺へのこだわり
店主には、麺の茹で方にも強いこだわりがありました。
ラーメンの麺は、大きな茹で麺機のなかで麺を広く泳がせて茹でた方が美味しくなります。梅光軒ではそれを取り入れています。また茹で麺機の水は、足し水で徐々に入れ替えるのではなく、一遍に新しい水へ入れ換えて綺麗な水で茹でることを意識されています。ざるは平ざるを使用し、一度にバッと水を切って、麺の熱が必要以上に逃げることなく提供しています。
さらに驚いたのは、麺を茹でる時間です。その日その日の環境(天気や湿気、麺の状態)を加味して、茹でる時間を調整しているので「毎日茹でる時間が変わる」と言います。
「なんとなく美味しい」と思ってもらえたら良い
ラーメンを食べるのが好きだから、と始めたお店ですが、「もう20年は他のラーメンを食べに行っていない」と言います。「よそから盗むものでもないし、もう決まっているから」と、自分が美味しいと思うラーメンを提供する、それは他で食べて盗めるものでもない、と語られました。
そして、「お客さんにはなんとなく美味しかったと思って帰ってくれたらいい」と言います。最初の一口目から最後まで「なんとなく美味しかった」と思ってくれたらそれでいい。
店主のこの考えが、常連さんがずっと来たくなる所以なのでしょうか。
この春、奈良に来られた方、梅光軒の常連客となって、どこか懐かしさを感じるお店で美味しいラーメンをぜひ食べてみませんか?
(文・写真 奈良ラーメン探検隊隊長・N)
店舗情報
<店舗名>
梅光軒
<住所>
奈良県奈良市大宮町7-2-41
<営業時間>
昼 11:30~14:00(土日祝は 11:30~15:30)
夜 17:00~23:00
<定休日>
火曜日
<駐車場有無>
3台
<公式SNS>
訪問メモ
【注文方法】
席に案内されてからの注文
【メニュー】
しょうゆラーメン 800円、など
【ラーメンメモ】
●スープ=透明
●ベース=豚骨、鶏ガラ、野菜(玉ねぎ)、煮干し、昆布
●麺=中細太のちぢれ麺
【店舗メモ】
●女性の入りやすさ ○
●座席数 23席(カウンター5席)