奈良町に「陰陽町」という地名がある。「…
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奈良町に「陰陽町」という地名がある。「いんようちょう」「いんぎょまち」などと読まれるが、江戸時代には陰陽師(おんみょうじ)が住んでいた。
小説や映画では悪霊を退治したり雨を降らしたりする陰陽師だが、主な仕事は暦(こよみ)作りや占いなど。奈良の暦は「南都暦」と呼ばれ、陰陽師は年占いを添えて檀家に配っていたという。
南都陰陽師に関する資料135点が今年3月、県立民俗博物館から福井県立若狭歴史博物館に譲渡された。陰陽師が実際に使用したとされる祭壇・礼盤や神棚などだ。
県文化財課は「福井で調査研究されることで資料の文化財的価値が向上すると考えた」と説明。決して良好だとは言えない県立民俗博物館の保管環境も考えれば、やむを得なかったかもしれない。
しかし、今は姿を消した陰陽師の道具類が確認されるのは極めてまれなことだという。先人たちの生活を知る貴重な資料であり、県外への譲渡は県民の宝の損失といえる。
県によると、現在は民俗資料の譲渡に関する規定はない。今後、譲渡のルールについても議論してほしい。(法)