35年ほど前、大学生の時に公立高校…
35年ほど前、大学生の時に公立高校の宿直のアルバイトをしていた。2人1組で学校の宿直室に泊まって校舎の見回りや電話番などをする仕事だが、アルバイト仲間にOさんという年配の男性がいた。
普段は物静かな紳士なのだが、夜中眠っている時に突然叫び出し、起こされたことが何度かあった。Oさんは戦時中、召集されてインパール作戦に従軍したという。
1944(昭和19)年、旧日本軍がイギリスの支配するインド北東部の攻略を目指した作戦。約3万人の日本兵が亡くなり、大戦中最も過酷で無謀な戦いといわれる。
京都出身のOさんの陸軍第15師団も、2万人のうち約1万5千人が祖国への帰還がかなわなかった。筆舌に尽くしがたい体験をしたOさんは、当時の悪夢にうなされていたのだろう。
Oさんは戦時中のことを尋ねても、あまり話そうとしなかった。ただ、「戦争ほど、つまらないものはない」と繰り返し言っていた。
大学卒業後、Oさんとは疎遠になった。年齢から考えて既に鬼籍に入られた可能性が高いだろう。毎年8月15日が近づくと、Oさんを思い出す。(法)