非日常を表した絵画で20世紀美術に衝撃…
非日常を表した絵画で20世紀美術に衝撃を与えたデ・キリコ(1888~1978年)展が東京都美術館で開かれている。10年ぶりとなる回顧展を鑑賞した。
歪んだ遠近法、脈絡のないモチーフの配置、マネキンの顔。「形而上絵画」ともいわれ、不思議な魅力を持つキリコの作品は、後のシュールレアリズムの画家から現代の商業絵画に至るまで大きな影響を与えている。
若くから独創的ではあったが、キリコも同じく長寿だったピカソのように年代によって画風が変遷したのが、70年の画業を振り返る同展で理解することができた。
母国イタリアの伝統のある都市の建物、街並みが作品に取り入れられているほか、古典絵画の様式を用いた時期がある。
同じく伝統的な建築物や文化遺産が豊富な奈良。単に古いだけでなく、新しい文化を創り出すポテンシャルを秘めているのではないか、とキリコ展を観覧しながら頭に浮かんだ。
70歳を過ぎてからも充実した制作活動を展開したキリコ。自信を失いがちな現代日本の高齢者は、ちょっぴり励まされるのでは。(栄)