電話帳を手際よく繰った主人公が、目当て…
電話帳を手際よく繰った主人公が、目当ての名前のあったページを引きちぎり、その人物に迫っていく。映画の中の電話帳はストーリー展開に重要な役割を果たしてきた。
「ターミネーター」では過去の世界に送り込まれたサイボーグが、「バック・トゥー・ザ・フューチャー」ではタイムマシーンで時代をさかのぼった主人公が、人を探すために電話帳を繰っていた。
時代は過ぎ、日本では個人名電話帳の発行がすでに終了、店舗や企業情報をまとめた「タウンページ」も廃止が決まったという。
先に挙げた2作品の公開は1984年と85年。彼らが今の世界に送り込まれたなら、ネットカフェに駆け込むか、スマートフォンを奪うことから始めるだろう。
「ご不在で荷物を持ち帰りました」「電気代が未払いのため電力サービスを停止します」。電話帳の長い歴史が幕を閉じようとする時代、携帯電話には怪しげなメッセージが届き、SNSでは偽広告が人を誘う。
サイボーグが襲ってくるわけではないが、詐欺被害の落とし穴がいくつも開いた社会は映画以上に恐ろしい。(増)